どっちがへん?米大統領選 中傷合戦は奇妙な展開に

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両候補が互いに激しく中傷を繰り広げる大統領選で、ハリス陣営は、これまでの「民主主義への脅威」「独裁者」といったトランプ批判に変わる新たなワードを多用している。

ハリス氏は先月31日の選挙集会で「選挙戦の勢いは変わりつつあり、ドナルド・トランプがそれを感じとっている兆候がある。彼は討論をやらないというが、彼とランニングメイトは、確かに私に言いたいことがたくさんあるようだ」と述べ、「ところで、彼らの言ってることって単に変(weird)だと思わない?」と問いかけた。

さらに陣営は25日に出した声明で、「今朝のFOXニュースを見て、われわれが抱く疑問はたった一つ。ドナルド・トランプは大丈夫か?」とトランプ氏のTVインタビューに触れつつ、アメリカ人がインタビューから得るべき教訓は「トランプは年老いていてかなり変人(weird)だ。・・・この男は二度と大統領になるべきではない」と加えた。

ハリス氏だけではない。

副大統領候補の可能性が囁かれるミネソタ州のティム・ウォルツ知事は、MSNBCのインタビューで、「彼らが変人なのは本当だ。彼らは、女性ヘイタークラブか何かに立候補している。それが彼らのやっていることだ。人々が関心があるのはそういうことではない」と語った。

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民主党の上院トップ、チャック・シューマー院内総務も、「バンス氏がより過激で、変で、突飛なことをしていることが毎日のように明らかになっている」と主張した。

これらに加えて、ハリス支持の政治活動委員会は、MAGA支持者の男性陣を奇妙な人物として描いたコマーシャルをリリースしている。

変人のレッテルを貼られたトランプ氏も黙っているわけにはいかない。

FOXニュースのローラ・イングラハム氏とのインタビューで、「これはすべてが詐欺だ。ただの変人だ」と主張。「彼女は明らかに変人だ。彼女は変な人物だ。彼女の過去を見てみろ。何をしたのかを見てほしい」と言い返した。

1日に配信されたラジオのインタビューでも、「彼らこそ変な人たちだ。誰も私を変人と呼んだことはない」と反論。「私にはいろいろなことがあるが、変人ではない。私は正直だ。彼もそうじゃない。JDはまったくそうではない」と自身とランニングメイトを擁護した。

共和党のマルコ・ルビオ上院議員も参戦。「彼らが我々を変人と呼ぶから、私は彼らをもっと変人(weirder)だと呼ぼう。それが私が高校時代にやっていたことだ」と応酬した。

「変人」攻撃は有効?

バンス氏は、2日に配信されたポッドキャスト番組のインタビューで、ハリス陣営の作戦は子供じみており、国民には響かないだろうと一蹴した。

「私のこれに対する姿勢は、完全な推測に過ぎないが、彼女のキャンペーンは24歳のソーシャルメディアインターンたちによって運営されていて、彼らはおそらく学校でいじめられた経験があって、同じことをやろうと決めたのだろうというものだ。彼らは中学生時代の社会生活の態度を真似て、選挙運動をしようとしている。ほとんどのアメリカ人は信じたり、気にかけたりしないだろう」。

バンス氏の主張に反して、ハリス陣営の作戦は効いているとの意見もある。

ジョージワシントン大学のデイビット・カルプフ教授はPBSのインタビューで、「これがうまくいっている理由の一つは、ネットでうまく拡散されているだけでなく、反対派が言葉を失い、不公平だと主張していることだ」と説明。「反対派があなたのメッセージを増幅させ、彼らを不快にさせる反応をすると、それを続けることになる」と、ハリス陣営は当面「変人」攻撃を続けるだろうとの見方を示した。

ワシントンポストのコラムニスト、モニカ・ヘッセ氏は、ヒラリー・クリントン氏が2016年大統領選でトランプ支持者に対して使った「嘆かわしい人(deplorable)」よりは効果的だろうと指摘した

「”嘆かわしい人”は、一部の支持者にとっては簡単に”ヤバイやつ”に変形されてしまう。”変人”はそのように機能しない。なぜなら、一連の行為に関わるものではないからだ。それはあなたにまとわりつく不快な悪臭であり、自分で知覚できないだけに直すことすらままならないからだ」。