ハバナシンドローム 政府に「ガスライティング」疑惑が浮上

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CIAの元職員は、30日に公開されたインタビューで、ハバナシンドロームの名で知られる謎の健康被害は敵国による「指向性エネルギー兵器」によるものとの考えを示した。さらに、CIAはそれを認めようとせず、被害者をガスライティングしていると非難した。

「アリス」と名乗る内部告発者の女性は、CBSニュースの元記者キャサリン・ヘリッジの取材に、指向性エネルギー兵器による攻撃を受けたとした上で、「耳が痛くなり、目まいがして部屋ぐるぐる回り始めた。頭が脈打ち、とても痛くて、左耳にひどい痛みを感じ、耳鳴りがして気を失いそうになった」と当時を振り返った。

ハバナシンドローム(正式名称:AHIs・異常な健康事象)は、2016年にキューバの外交官らの間で報告された原因不明の健康被害を指す。職員らは、大きな音が聞こえ、頭部に圧力を感じた後、めまいや歩行障害、視覚障害などの症状を訴えた。2018年には、中国に滞在する外交官とその家族など十数人が、同様の症状を訴えた。症状は数か月、場合によっては数年続くこともあり、長期的な症状には、頭痛、片頭痛の悪化、睡眠障害、平衡感覚の喪失、めまい、耳鳴り、認知能力の喪失が含まれるとされる。これまでにオーストリア、中国、コロンビア、ジョージア、ドイツ、インド、ポーランド、ロシア、ベトナムでも事例が報告されており、健康被害は推定334人に及んでいるとみられている。

ハバナシンドロームに関する調査を進めている下院情報特別委員会のCIA小委員会は今月、情報機関の評価に反して敵国が関与している可能性が高いとし、早急な再評価を求めた。

国家情報会議は2023年に作成した評価報告書で、情報機関の大半がハバナ症候群の原因が外国の敵対勢力にある可能性は「非常に低い」と結論づけたと報告していた。

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アリス氏によると、被害に遭ったのは2021年、当時アフリカに勤務していた。自宅で「奇妙な音」が聞こえ、その数秒後に「スピーカーの反響音のような音」を足まで感じたという。

原因について、「バックパックに収まる武器、車のトランクに収まる武器、通りの向こうの人々の視界に入る位置に仕掛けられる武器があると思う」とさまざまな兵器の可能性を指摘。「ロシアのGRUが夜に自宅にやってきて、前線から私を取り除いたのだと思う」とロシアの情報機関による攻撃との考えを語った。

2021年当時、CIAのウィリアム・バーンズ長官は私見として、ロシアが関与している可能性を示していたという。同年11月、モスクワを訪問したバーンズ氏は、ロシアがハバナシンドロームに関係していると判明した場合、「責任を取ることになる」と同国の諜報機関トップに警告したと報じられたこともあった。

アリス氏は、こうした見解があったにもかかわらず、CIAは生存者に「自らの負傷に疑問を抱かせる」ようガスライティングしてきたと主張。敵国による関与を認めようとしないのは、「ロシアが絡むと複雑になる」からだと述べるとともに、組織の人材確保にも悪影響を及ぼすと語った。

CIAは疑問を呈しているものの、労働局はアリス氏の外傷性脳損傷を労働災害として認め、2021年に成立した「ハバナ法」に基づいて補償を提供したという。ただし、医療費をカバーするにはほど遠く、10万ドル以上を自腹で支払っていると明かした。医療上の理由で退職したアリス氏に対して、CIAはセキュリティ・クリアランスを剥奪したという。

告発した理由について、「なぜならCIAは裏切っているからだ。裏切りだけでなく、私の友人や私の人生を生き地獄にしている」と説明。被害を否定するのをやめて、「私が大切するすべての人に医療費とハバナ法による給付金を支給し、長期的なケアを提供してほしい」と語った。

Mashup Reporter 編集部
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