ロシアのウクライナ侵攻開始から3ヶ月以上が経過する中、ヒラリー・クリントン氏は2日、英・ウェールズで開催中の文学の祭典「ヘイ・フェスティバル」で、外交でプーチン大統領と接した際の印象を振り返り「自分を救世主かのような思い込み」があり、女性からの批判を嫌っていると語った。英ガーディアン紙が伝えた。
クリントン氏は同イベントにゲストスピーカーとして参加。ロシアの戦争責任の追求を呼びかける人権派弁護士団体のメンバー、ヘレナ・ケネディ氏と対談した。
その中でクリントン氏は、国務長官を務めた2009年から2013年の間、当時ロシアの首相だったプーチン氏と「一定程度、前向きな関係を築いた」と振り返ったうえで、プーチン氏が大統領に返り咲いた2012年の選挙を「あからさまに不当」だと批判すると、急に関係が悪化したと明かした。
クリントン氏は当時、ロシア国民には「発した声が届けられ、投じた票は反映される権利がある」とし、「国際基準に見合った選挙を」と主張したが、その後ロシアで数十万人規模の抗議デモが起きると、プーチン氏はこの非難の矛先をクリントン氏に向けたという。
クリントン氏は「プーチン氏は自分への批判を嫌う。特に女性からの批判は」と印象を口にしたうえで、「この一件以来、プーチン氏は数少ない例外を除き、私に対して非常に敵対的になった」と説明。さらに「ご存知の通り、本人は否定するものの、プーチン氏はあの手この手でトランプ氏を大統領に押し上げようとした」と語った。
ロバート・モラー特別検察官は、2019年のロシアゲート捜査報告書で、クリントン氏を貶めるSNSキャンペーンやハッキングによって盗み出した資料の公開などを通じて、ロシアが選挙に介入したと報告。一方、トランプ陣営との共謀は捜査によって立証されなかったとしている。
クリントン氏はまた、外交を通じて、プーチン氏の「自分をほとんど救世主であるかのように信じ、天命を受けていると思い込んでいる様」や、「帝国ロシアの復興という目標」を目の当たりにしてきたと告白。このため当時、プーチン氏が「ヨーロッパや世界の脅威になり得る」と警告するメモを残したと明かした。
ウクライナ侵攻については、「残念ながら驚きはしなかった」とし、「ゼレンスキー政権とウクライナの防衛力が効果を発揮していることに、良い意味で驚いている」と語った。NATO諸国の武器供与については前向きな考えで、「NATOの存続と、将来的により効果的な機関にすることの必要性」を再確認したと話しつつ、2020年の大統領選でトランプ氏が再選されていたら、アメリカはNATOを脱退していただろうと加えた。
戦争責任の追及に関しクリントン氏は1990年代のユーゴスラビア紛争やルワンダ虐殺の後に行われた国際裁判を例に挙げ、ロシアの責任者に対しても同様の司法制度のもと裁くべきだと呼びかけた。そのうえで、自ら認めた場合でない限り「国家のトップを裁くのは常に困難」だとの認識も示した。
クリントン氏の提唱する国際司法制度はイラク戦争におけるイギリスやアメリカの責任を追及するものにもなり得るかと質問を受けると、「あり得る」としながらも「人々が想像するより、可能性は低い」と語った。