13日、米下院でマヨルカス国土安全保障長官を弾劾訴追する決議案が214-213で可決した。
Axiosによると、弾劾条項は「意図的かつ体型的な法順守の拒否」と「公衆の信頼の裏切り」の2つで、共和党は22ページにおよぶ決議案で、マヨルカス氏が連邦法と移民の拘束に関する裁判所の判決に従わず、南部国境を超えて入国する不法移民の急増を招いたと非難。マヨルカス氏は「国家と国境の安全に対する脅威であり続けることを示し」、「義務と法の支配に極めて矛盾する行動をとった」とした。
採決が行われるのは先週に続く2回目。前回は、共和党の4人の造反とスティーブ・スカリーズ下院院内総務のがん治療による欠席により、214-216で否決された。
民主党と専門家の一部は、マヨルカス氏の移民対応をめぐる議論は本質的に政策論争で弾劾に値しないと主張しているほか、弾劾訴追の基準となる重・軽犯罪のレベルに達していないと批判している。マヨルカス氏は、自身に対する疑惑は根拠がなく、職務を続けるとしている。
上院では3分の2以上の議員の賛成で有罪となることから、罷免を免れるのはほぼ確実とみられる。弾劾裁判の検察官役となる弾劾マネージャーには、決議案を提出した国土安全保障委員会のマーク・グリーン委員長(共和党、テネシー)や弾劾を求める運動を主導してきたマージョリー・テイラー・グリーン議員(共和党、ジョージア)ら11人が指名されている。
150年ぶり2人目
閣僚の弾劾訴追は1876年のウィリアム・W・ベルナップ陸軍長官以来2人目だという。
議会資料によると、南北戦争後の拝金主義が横行した金ピカ時代、ユリシーズ・グラント政権で陸軍長官を8年間近く務めたベルナップは、豪華なパーティーを開き、妻がエレガントに着飾るなどの贅沢な暮らしぶりで知られていた。
そうした中、政府の年収8,000ドルでどのようにして豪華なライフスタイルを維持しているのか疑問が浮上。下院委員会の調査の結果、汚職が発覚し、弾劾訴追を受けるに至った。
調査では、贅沢好きな最初の妻コラ・ルロイがカレブ・マーシュという名の策士と協力して、インディアン準州の駐屯地にあった軍事貿易所のポストにマーシュの仲間を任命するよう夫を説得、マーシュは見返りにキックバックを約束していたことが判明した。仲間の男は5年間にわたって、マーシュに多額の金を注ぎ込み、マーシュはベルナップに四半期ごとにリベートを支払っていた。その額は合計2万ドルに上ったという。
下院で弾劾条項が通過したのは1876年3月2日だった。ベルナップは直前になって「涙を流して」辞表を提出したという。しかし、下院では予定通りに「陸軍長官としての義務を犯罪的に度外視して、自身の高い地位を私利私欲のために卑劣に傷つけた」などの5つの弾劾条項が採決にかけられ、全会一致で可決した。
ニューヨークタイムズによると、上院では最初、司法管轄権の有無が争われた。ベルナップの弁護士は、下院は民間人を弾劾訴追することはできず、よって上院は弾劾裁判にかけることはできないと主張した。これに対して弾劾マネージャーらは、弾劾された時点の身分に関係なく、犯罪が在職中に行われたかどうかが問題だと反論したという。
その後、管轄権の問題は上院の過半数の投票によってクリアされ、弾劾裁判が実施されたが、賛成が3分の2を下回り有罪を免れた。事前の投票で上院の管轄権が確認されたにも関わらず、反対票を投じた25名中22人の議員が、管轄権がないことを理由に挙げたという。