イランがイラクにある米軍の駐留基地を攻撃したことを受け、トランプ大統領は8日、ホワイトハウスで国民に向けて演説を行った。
トランプ氏は、米国とイラク双方に死者がでなかったことを「幸い」と述べ、イランは「身を引いているようだ。当事者すべてにとって良いことで、世界にとって大変良いことだ」と語った。
イランの攻撃に対する軍事行動の可能性について言及しなかった。一方、イランが行動を変えるまで「米国は直ちにイラン政権に懲罰的な追加の経済制裁を課す」と述べた。
トランプ氏は4日のツイートで、イランが米国人や米国の資産を攻撃した場合、イランの文化にとって重要なものを含む52施設を標的とすると発表していた。
演説では、イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官について「アメリカを標的とする新たな攻撃を計画していた」と述べつつ、「彼はずっと以前に殺害されるべきだった。彼を取り除くことで、われわれはテロリストに力強いメッセージを送った。」と、ソレイマニ氏殺害の決定を擁護した。
イラン核合意について、改めて前政権の批判を繰り返した。
トランプ氏は、イランの敵対行為は「ばかげたイラン核合意から大きく増加した。18億ドルの現金は言うまでもなく、彼らには1,500億ドルが与えられたのだ」とイラン資産の凍結解除に言及。協定から得られた資金を元にイランがテロ行為を続け、「我々と同盟国に放たれた昨晩のミサイルは、前政権によって入手可能となった資金により支払われた」と主張。英国とドイツ、フランス、ロシア、中国に「現実を認める時だ」と述べ、イラン核合意からの離脱を呼びかけた。
このほか、自身の政権のもと、米国はエネルギー自立を達成したと述べ、「われわれは今や世界一の石油と天然ガスの産出国だ。独立しており、中東の石油を必要としていない」と主張。米軍について、2兆5,000億ドルを費やして完全な再建を果たし、かつてないほど強力だと語った。一方、偉大な軍事力と設備は使用を意味するものではないと強調。「我々はそれ(軍事力)を使用したくない」と述べたほか、軍事と経済の強さは最大の抑止力になると語った。
イランに対し、繁栄と世界との調和を望んでいると述べ、「米国は平和を求める者と平和を受け入れる用意がある」と語りかけた。
下院 大統領の対イラク戦争権限を制限する決議案採決へ
同日、ナンシー・ペロシ下院議長は声明で、イランに対する軍事行為に関し、大統領の権限を制限する決議案を9日に採決すると発表した。
決議案は、議会の正式な承認や米国への差し迫った武力攻撃がある場合を除き、大統領にイランに対するすべての軍事力の行使を停止することを要求する内容。
ペロシ氏は「ソレイマニ司令官の殺害はイランとの緊張をエスカレートさせる危険を冒し、戦闘員や外交官を危険にさらした」と述べ、トランプ氏は「米国人の安全を保ち、イランとの緊張を緩和、地域の安定を確実にする一貫した戦略がない」と批判。
戦略の欠如と敵対行為に関する議員の深刻かつ緊急の懸念に、大統領による戦争権限法に基づく報告書と、政権メンバーによる報告は答えていない、と述べた。
8日、マーク・エスパー国防長官とマイク・ポンペオ国務長官、ジーナ・ハスペルCIA長官、マーク・ミリー統合参謀本部議長は上下両院の議員に報告を行った。
報告を受けた民主党議員と複数の共和党議員からは、説明が不十分として非難の声が上がった。
さらにペロシ氏は声明で、2002年軍事力行使権限法(AUMF)の廃止と、議会承認のないイランへの軍事行動のための資金使用を禁じる法案を追加で検討すると述べた。NBCによると、政府はソレイマニ氏殺害の法的正当性の根拠として、AUMFを引用している。