米国に不法に渡り、南部の州からニューヨークに移送され一時的にマンハッタンのホテルに滞在中だった移民らが、自分たちを移民シェルターに移動させるという市の計画に反発。ホテル前で、毛布を抱えた移民が夜通し路上に座り込んで抗議する事態となっている。
南部国境沿いのテキサス州やフロリダ州などは不法入国者急増の現実を移民に寛容な「聖域都市」にも認識させるためとして、昨年春からニューヨークやワシントンDCなどに移民をバスなどで移送している。ニューヨークには4万人以上が到着し、市当局は暫定的な措置として、ミッドタウンのホテルに滞在させていた。
市によると、一連の移民対策にかかる費用は10億ドル(約1,300億円)を超えると予測されている。
先週末、ブルックリン・レッドフック地区の「ブルックリン・クルーズ・ターミナル」に設けたシェルターに移す予定になっていたが、一部の移民がミッドタウンのヘルズキッチン地区にあるワトソンホテルにとどまることを希望し、移動計画を拒否。29日にはホテル前の路上に座り込んで一夜を明かし、支援に集まった人権活動家らとともに抗議した。
ニューヨークのエリック・アダムズ市長は、シェルターへの移動について、ホテルは子供のいる大人数の家族に優先して割り当てると説明。独身の男性を対象にホテルからの退去を求め、週末から移動を開始した。移動先の設備については、「市内にある他の人道支援センターと同じサービスを提供して」おり、快適な暮らしを約束するとしていた。
しかし、すでにシェルターに移動した移民の中には、暖房が弱くトイレのスペースも不十分など不満があるとして、ホテルに戻った者もいる。
今回の事態を受け、アダムズ市長は改めて州や連邦政府に不法移民対応への支援を要請。「昨年春以降、ニューヨーク市には4万2000人を超える亡命希望者が到着した。我々は道徳的義務の範囲を超え、彼らに滞在先や食料、医療ケア、教育などのサービスを継続して提供する」とし、そのためには州や連邦の協力が不可欠だと訴えた。
アダムズ市長は、不法移民の急増で市は「限界寸前」にあると訴えており、事態に対応する一時的な措置としてブルックリン・クルーズ・ターミナルに簡易収容施設を設けると発表していた。春のクルーズシーズン前には閉鎖する予定で、その間、成人に対し「滞在場所、各種サポートへのアクセス、最終的な目的地までの支援」を提供するとしている。
アダムズ市長によると、ニューヨーク市では移民が毎週のように増加しており、その数は1日あたり平均400人に達している。今月初めには1日で835人が到着した日もあったという。今月、テキサス州国境の街、エルパソを視察したアダムズ市長は、違法な国境越えの急増を「国家の危機」と訴えた。