7月にアマゾンの最高経営責任者を退任した世界一の富豪、ジェフ・ベゾス氏(57)が、今年新たに設立されたアンチエイジング関連のスタートアップ企業に投資をしたことがわかった。MITテクノロジーレビューが伝えた。
企業はアルトス・ラボ(Altos Labs)という名で、世界中からトップの研究者を集めて「細胞を若返らせるリプログラミング技術を追求」する。一部の研究者は、リプログラミング技術は動物の体全体を再活性化し、最終的には人間の寿命を伸ばすことにつながると考えているという。
新会社は米国と英国で設立されており、今後、ベイエリア、サン・ディエゴ、ケンブリッジ、日本でも複数の機関を設け、高額な報酬で研究者らを採用することを計画している。
現在すでに、スペインの生物学者でソーク研究所のファン・カルロス・イスピスア・ベルモンテ氏、UCLAのスティーブ・ホルヴァート教授らが参加している。
ベルモンテ氏はヒトの幹細胞をサルの胚で培養するなどの研究で知られており、人間の寿命を50年間延ばすことが可能になると予測している。
また2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が、無償でシニア・サイエンティストとして加わるほか、同社の諮問委員会の議長も務める予定だという。
アルトスが提示する給与は「スポーツスター」なみの年間100万ドルかそれ以上だという。同じく研究者として参加することになった、バルセロナの生物医学研究所のマニュエル・セラーの教授は、取材に、現在の稼ぎの5から10倍が支払われるだろうと見通しを語った。
プロジェクトは、昨年10月にロシアの富豪ユーリ・ミルナー氏のパロ・アルトのマンションで2日間に渡って行われた会合から発展したという。ミルナー氏は当初、慈善活動として考えていたが、今年に入って潤沢な資金のある会社を用意して、研究を早める計画が浮上したという。
新会社はすでに2億7,000万ドルを調達したという。投資家には、ベゾス氏とミルナー氏以外に、ベンチャーキャピタリスト、裕福なIT関連の人物らが加わっているという。
ベゾス氏 投資の目的は?
ベゾス氏は長寿の研究に長らく関心を示しており、ユニティ・バイオテクノロジーというアンチエイジング企業に投資をしたこともあったという。
アマゾンの株主に宛てた最後の手紙では、リチャード・ドーキンスの本にあった死や衰退に関する言葉を引用。「人は死を食い止めることに努めなければならない」「肉体は周囲の環境と均衡状態に戻る傾向がある」といった言葉を紹介した上で、企業や機関、個人も「固有」で「特別」な存在であり続けるために、この圧力に抗わなければならないと訴えた。ベゾス氏にとって老いは戦うものであり、投資はその一環なのかもしれない。