未成年者への性的搾取や性的暴行などの容疑で起訴され、マンハッタンの拘置所に収監されていたビリオネア、ジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)被告(66)が10日早朝、自殺を図り死亡した。
ヘッジファンド・マネージャーの富豪、エプスタイン氏は、ビル・クリントン前大統領やトランプ大統領など有力政治家らと親交がある。
ABCニュースによると、エプスタイン氏は、午前6時半ごろ、拘置所の監房で首をつり、意識不明の状態で発見された。その後、搬送先のニューヨーク・ダウンタウン病院で6時39分に死亡が確認された。死亡原因については、現在連邦捜査局(FBI)が調査を行っている。
事件のタイムライン
エプスタイン氏は2006年5月、フロリダ州マイアミで未成年者との違法な性行為を行ったとして訴追された。
2008年、エプスタイン氏は当時の事件で連邦検事を務めたアレクサンダー・アコスタ(Alexander Acosta)前労働長官との司法取引により、児童買春1件の罪を認めるものの連邦法の起訴を免れ、18カ月間の郡刑務所での禁固刑が命じられた。
2018年7月、マイアミ・ヘラルド紙のジュリー・ブラウン(Julie K. Brown)記者は、エプスタイン氏による性的暴行疑惑と、アコスタ氏の間で交わされた司法取引に関する調査報道を掲載した。
30人以上の被害者が明らかとなっていたにも関わらず、連邦法で不起訴としたことや、実際の服役は僅か13カ月で、週6日は外泊を許可されていたという。
トランプ政権下で労働長官に任命されたアコスタ氏は、2019年7月にエプスタイン氏が逮捕された後、当時の対応に批判の声が高まり、辞任に追い込まれた。
2019年2月、司法省がエプスタイン氏の司法取引に関する捜査を再開。
7月6日、エプスタイン氏は、2002年から2005年にかけて、ニューヨークのアッパーイーストサイドのマンションやフロリダ州パーム・ビーチの自宅で、数十人の女性に対して児童買春を行った容疑で、ニュージャージー州の空港で逮捕され、その後、ニューヨーク州の連邦検察によって、性的目的の未成年の人身取引や性的暴行の容疑で起訴された。
マンハッタンの自宅の家宅捜査では、少女のヌード写真数百枚が押収されている。
複数の報道によると、有罪判決を受けた場合、最大45年間の禁固刑が科せられる可能性があった。
7月23日、エプスタイン氏は拘置所で自殺を図ったとして、半ば意識不明の状態で病院に搬送された。その後、自殺の恐れがあるとして監視下に置かれていたが、昨日はその監視が解かれていたという。
7月31日の公判では、エプスタイン氏は無罪を主張。次回公判は来年夏以降に開かれる予定だった。
NY州控訴裁判所が裁判資料を公開
8月9日、ニューヨーク州連邦控訴裁判所は、性的暴行の被害者ヴァージニア・ロバーツ・ジュフレ(Virginia Roberts Giuffre)さんとエプスタイン氏、買春の手助けをしたとされる英国のソーシャライツ、ギレーヌ・マックスウェル(Ghislaine Maxwell)氏との間で争われた2,000ページに及ぶ裁判資料を公開した。同裁判は、非公開を条件に2017年に和解が成立している。
裁判書類によると、フロリダ州マールアラーゴにある別荘で働いていたジュフレさん(当時17歳)は、1999年にマックスウェル氏から、エプスタイン氏を紹介された後、「性的奴隷」として扱われ、性的暴行の被害を受けたと主張。
2人はジュフレさんに対し、著名な政治家と性的行為を行うよう指示を行ったという。非公開の書類の中には、エリザベス女王の次男のヨーク公アンドリュー王子や、刑事事件弁護士でエプスタイン氏の弁護を務めたアラン・ダーショウィッツ(Alan Dershowitz)、ビル・リチャードソン(Bill Richardson)前米ニューメキシコ州知事、ジョージ・ミッチェル(George Mitchell)元上院議員などの著名人の名前が上がっている。なお、裁判では、マックスウェル氏らはこの件について終始否定している。
捜査は継続へ
ニューヨーク州南部連邦検事は声明で、被害者のために捜査を継続する意向を発表。
一方で、FBIは自殺に関する捜査を開始すると発表。また、ウィリアム・バー(William Barr)司法長官も、収監中のエプスタイン氏が自殺を図ることができたことに、「愕然とした。」と述べ、今回の件は重大な問題を提起しているとし、監察官に話をしたことを明らかにした。