複数の大統領の下で国家安全保障に関わる要職を歴任したジョン・ボルトン氏が、トランプ氏の外交上の振る舞いについて、同盟国のリーダーはいかに解釈するべきか、どう対応すべきかについて見解を語った。タカ派として知られるボルトン氏は、第1期トランプ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を17ヶ月間務めたが、近年は批判に転じている。
トランプ外交は「個人関係」
13日、ウクライナのキーウ・ポストのインタビューに応じたボルトン氏は、トランプ氏は外交を「2国間の首脳の関係と同等」と見なしていると説明。「プーチン氏と良好な関係にあるなら、彼は米国とロシアの関係が良好だと考えている」と続けた上で、「トランプ氏はロシアが友人だと考えているが、プーチン氏はトランプ氏をいいカモだと見ている」と加えた。
ゼレンスキー大統領に対する厳しい姿勢には、2019年に弾劾裁判に発展したウクライナ疑惑以来の嫌悪が背景にあると示唆。ゼレンスキー氏は「それを克服しようと多大な努力を払っている」と語った。
関係が一気に悪化した先月のホワイトハウス訪問から一転。ゼレンスキー氏は改善に努め、米国主導の30日間の停戦に合意した。今後はプーチン氏が受け入れるかが焦点になる。
ボルトン氏はまた、こうしたトランプ氏の外交は、支持者らが「3Dのチェス」と囃し立てるような狡猾な戦略があるわけではなく「通常のチェスを1手ずつプレイしているだけ」とも主張。「トランプ氏は外交概念を捉えておらず、完全に個人的なことだということを理解した上で協力することが重要だ」と語った。
さらに、「全体像もなければ、隠れた意図もない。トランプオーガニゼーションを運営していた頃からそんな風には考えてこなかった。….マンハッタンの不動産ではうまくいくかもしれないが、国際舞台ではうまくいかない」、「彼は国際情勢の重要な側面について何も知らず、経験もなく、政府の運営方法やその能力にもよく知らず、特に気にも留めず、学ぶことさえ興味がなかった」と酷評を続けた。
指導者が取るべき対応とは
ボルトン氏は、ゼレンスキーだけでなく、「トルドー氏が好きではなかった」というトランプ氏は、カナダ首相を州知事呼ばわりするなど「けなして楽しんでいる」と批判。「真面目な話、彼の正気を疑わざるを得ない」としつつ、一連の言動により、カナダ国内で保守政党が支持を失うという墓穴を掘ったと指摘した。
カナダ併合案は「真剣ではない」とする一方、グリーンランドの獲得については国益にかなうとの見方を示した。ただし、「民主的に選出された指導者を追い詰めるのは自滅」と述べ、交渉を「スポットライト」の下で行うのは得策ではないと語った。
トランプ氏への対応方法について、各国の指導者にとって「非常に苛立たしいことだと思う」が、「私が言える最善の方法は、ただ歯を食いしばること」と説明。「歯を食いしばって、トランプ自身が同盟関係に与えている以上のダメージを与えないように努力するべきだ。同盟が崩壊すれば、冷戦ではありえなかったモスクワに勝利をもたらすことになる」と懸念を示した。
イギリスのキア・スターマー首相やイタリアのメローニ首相はうまく関係を構築しているとの見方を示し、「こう言わなければならないのは残念だが、指導者らはトランプ氏をいかにおだてるかを考えなければならないと思う」と主張。「私のゼレンスキー氏に対する提案は、日本の安倍晋三首相がトランプ氏をノーベル平和賞に推薦したように、それを誰かが考える前に実行することだ」と助言を送った。