自ら計画したヘイトクライムで、被害者を装い、警察に虚偽の報告をしたとして起訴されたジャシー・スモレット被告の裁判。陪審団は9日、約10時間におよぶ評議の末、有罪評決を下した。
スモレット被告は6件の治安紊乱行為の罪に問われ、このうちの5つが有罪とされた。ニューヨークタイムズによると、いずれも事件当日の報告に関するもので、無罪とされたのは、約半月後に警察が行なった聴取に関するものだった。
評決が読み上げられる間、スモレット被告は、背筋を伸ばし椅子に座り、手を握りしめて陪審団をまっすぐに見つめていたという。
2019年1月29日、当時FOXドラマ「Empire 成功の代償」に出演していたスモレット被告は、シカゴの自宅アパートの近くで、マスク姿の男2人から暴行を受けた上、化学薬品をかけられ、首に縄をかけられたと説明。犯人らが人種差別かつ同性愛者を嫌悪する言葉を叫び、「これがMAGAの国だ」と怒鳴ったなどと話した。
検察は、スモレット被告が、ナイジェリア出身の兄弟、アビンボラ・オスンダイロ氏とオラビンホ・オスンダイロ氏に3,500ドルを支払って、犯行を依頼したと主張。弁護側は、支払いはアビンボラ氏に対する食事やトレーニングのアドバイス料金と反論し、2人は、スモレット被告を脅して、ボディガードとして雇わせるために犯行に及んだと主張した。
ニューヨークタイムズによると、検察は審理で、スモレット被告には説明のつかない複数の点があると指摘。事件発生時、2人が、スモレット被告が通過した交差点の場所や時刻を知っていたことや、スモレット被告が最初、犯人を白人と報告した点、警察への携帯電話の引き渡しや唾液検査を拒んだことを挙げた。
8日の最終弁論では「彼はヘイトクライムとして報告したかった。メディアへの露出を望んだ。しかし、兄弟を逮捕したくはなかったのだ」と主張した。
デイリーメールによると、スモレット被告の弁護士、Nenye Uche氏は取材に、評決は一貫性に欠け、同意できないと主張。「上訴審で勝利する100パーセントの自信を感じている」と、上訴する意向を示した。
有名俳優がヘイト被害に遭ったとされた事件は当時、大統領選候補者らを巻き込む議論に発展した。
当時、民主党の大統領選予備選の候補者だったカマラ・ハリス氏は、事件を「現代のリンチ」と非難。スモレット被告が起訴されると「悲しく、苛立ち、落胆している」と述べ、虚偽報告は、他のヘイトクライムの被害者が訴え出ることを困難にする、と声明を発表した。
トランプ氏は、事件を「これ以上悪いことはない」と述べたが、後に、スモレット被告がMAGAに言及したことを取り上げ、「なんてこった。これこそヘイトクライムじゃないか」と批判した。
バイデン氏は、事件を「決して容認してはならない。このヘイトに、逃げ道を与えてはならないと要求しなければならない」と声明を発表。「ジャシー、われわれは君とともにある」とツイートしていた。
タイムズによると、スモレット被告は、最長で3年間の実刑を言い渡される可能性がある。量刑宣告の日は、まだ決定されていない。