米俳優カーク・ダグラス(Kirk Douglas)さんが5日、死去した。103歳だった。長男で俳優のマイケル・ダグラス(Michael Douglas)さん(75)がSNSで明らかにした。
マイケルさんは、カークさんの複数の写真とともに、愛する父へのメッセージを投稿した。
「世界のレジェンド、映画の黄金時代の俳優で、正義に対するコミットメントや信念など私たちが目指すべき基準を定めた人道主義者だった。
私や弟のジョエル、ピーターにとってはお父さんであり、キャサリンにとっては素晴らしい義理の父で、孫やひ孫にとっては愛すべきおじいちゃん、妻のアナにとっては素晴らしい夫だった。
カークの人生は大変充実したものだった。次世代に語り継がれる映画にレガシーを遺し、公共に尽くし、地球に平和をもたらす著名なフィランソロピストとして歴史を残した。
私が彼の最後の誕生日に伝えた言葉で終わらせてください。お父さん、心からあなたを愛してます。あなたの息子であることを本当に誇りに思っています。」
カーク・ダグラスさん(本名、イスール・ダニエロヴィッチ)は1916年12月9日、ニューヨーク州のアムステルデム(Amsterdam)に、ロシア系ユダヤ人の家庭に生まれた。
家は貧しく、俳優になる前はプロのレスラーからウェイター、管理人など40以上の職に就いたという。奨学金などを得て、セントローレンス大学とニューヨークの演劇学校アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツに進学しした。演劇学校で、将来の妻となるダイアナ・ディル(Diana Dill)さんに出会った。1944年にマイケル・ダグラスさんが生まれている。
カーク・ダグラスという芸名でブロードウェイの端役で出演。第2次世界大戦で海軍で兵役に仕えた後の1946年、映画「The Strange Love of Martha Ivers」でスクリーンデビューを果たした。
大ヒット作品は、1949年米公開の映画『チャンピオン』(Champion)で、オスカーの主演俳優賞にノミネートされた。『悪人と美女』(The Bad and the Beautiful)や、『炎の人ゴッホ』(Lust for Life)、『OK牧場の決斗』(Gunfight at the O.K. Corral)など生涯で90作品以上に出演している。
母の名を冠した自身の製作会社Bryna Productionsでは、スタンリー・キューブリック監督の『突撃』(Paths of Glory)や『スパルタカス』(Spartacus)などを製作し、同作品では主演を務めた。
Foxニュースによると、カークさんは『スパルタカス』で、赤狩りに異議を唱えた「ハリウッド・テン」の1人、ダルトン・トランボ(Dalton Trumbo)氏を脚本家として起用し、業界のマッカーシズムに終止符を打ったという。
1951年に離婚し、1954年にアン・バイデンス(Anne Buydens) さんと再婚。女優のジョーン・クロフォードや、マレーネ・ディートリッヒ、ピア・アンジェリさんらと関係を持っていたが、家庭的な男性としての評判を保っていた。年を経るにつれ、妻に献身的になっていったという。
家庭円満の秘訣として「午後6時半頃の”ゴールデンアワー”を共に過ごすこと。座って、話したり笑ったりして、1日のことや考えなどをお互いに共有することだ。」と2017年にインタビューで語っている。
1980年に息子のマイケルさんが俳優として活躍し始めた頃、 慈善活動へと活動の場を移し始めた。生涯に5,000万ドル以上を慈善事業で寄付し、ロサンゼルス地区の400校に運動場の修復費用を寄付している。1963年から国務省の親善大使を務めており、1981年に民間人としては最高位の勲章である大統領自由勲章を授与された。1983年に公職のための、ジェファーソン賞(Jefferson Award)を受賞している。俳優としての受賞はなかったが、1996年にはアカデミー賞の名誉賞を受賞した。