カナダの高級ヨガウェアブランド「ルルレモン」が、春節のキャンペーンに、昨年のアカデミー賞主演女優ミシェル・ヨーを起用したが、アジア人コミュニティから非難の声が上がっている。
物議を醸しているのは、12日に公開されたショートフィルム「Be Spring」。雄大な中国の山脈を背景にルルレモンのウェアを着たヨーが武術を披露している。
ルルレモンは過去に、創業者や従業員によるアジア人蔑視的な言動が、不買運動に発展したこともある。今回の動画は、こういった感情を蒸し返したようだ。
カナダを拠点とするアジア系の擁護団体「The RepresentASIAN Project」がSNSにシェアした動画には、「アジア人からの印象を修復しようとしている」「ルルレモンは人種差別の歴史と敵対的な職場環境の持ち主」「大株主の創業者はダイバーシティを否定していた」など批判的な意見に加え、CMに出演したヨーへの落胆を示すコメントも多数投稿されている。
日本人は「L」が発音できない
創業者で元CEOのチップ・ウィルソン(Chip Wilson)氏は今月、フォーブスのインタビューの中で、ルルレモンは「すべての人にすべてのもの」を提供しようとするGAPのようだと現在の経営方針を批判し、ブランドは「特定の客の来店を望んでいないことを明確にすべきだ」と主張した。また現在広告に起用しているモデルは「不健康」に見えるとも語ったことで、物議を醸した。
ウィルソン氏の発言に、ルルレモンは「われわれの考えや信念を代弁するものではない」と釈明。チップ氏は2015年に取締役会から退任していると説明し、「以前とは全く異なる企業だ」と声明を発表した。
コロナ禍の2020年には、アートディレクターの元従業員が自身のSNSで、反中国的なデザインのTシャツを投稿し、批判を浴びている。
「バットチャーハン」と名付けられたTシャツには、コウモリを模したテイクアウト用の容器と「ノーサンキュー」の文字が入っていた。Tシャツは、中国のSNS「Weibo」で、#lululemoninsultschina(ルルレモンは中国を侮辱)のハッシュタグとともに拡散され、ボイコット運動が起きた。
ブランド名の由来も問題視されている。ウィルソン氏は2005年にナショナル・ポスト・ビジネス・マガジンのインタビューで、ブランド名について、日本には「L」の発音がなく、Lが3つ含まれる名前をつけると(当時自身が所有していたスケートブランドの)3倍稼げるのではないかと考えたと語っていた。日本人が「発音しようとするのを見るのは面白い」とも発言している。
ファットフォビア的なコメントが問題となったこともある。プラスサイズの洋服の製造には、3倍のコストがかかり「マネー・ルーザー」だと述べたほか、2013年には「正直、一部の女性の体には合わない」とプラスサイズの顧客を排除するような発言が波紋を呼んだ。
2020年には、社内でIDEA(インクルージョン・ダイバーシティ・エクイティ・アクション)部門が設立されたが、ある従業員はBoFのインタビューで、あくまでも企業イメージを守るために作られたと主張している。