米配車サービス大手のリフト(Lyft)は29日、ナスダックに株式を上場した。
初値は、公開価格(72ドル)を20%以上上回る87.24ドルで、好調なスタートとなった。終値は78.29ドル(8.7%高)となり、ニューヨークタイムズによると時価評価額は264億ドルに達した。
2012年にサービスを開始したリフトの2018年の最終損益は9億1,100万ドルの赤字で、前年の22億ドルから改善した。ここ数年の売上高は毎年約150%増加しており、市場シェアは2016年の22%から39%へと上昇している。
米株式市場では数カ月内に、過去5年間で最大と目される、配車サービス最大手のウーバーの上場も控えている。ニューヨークタイムズは、リフトの上場はギグエコノミーの台頭を確かなものにしたと報じた。
一方、同紙は新ビジネスはいまだ、収益化できるかどうか、ビジネスのファンダメンタルの部分で証明ができていないと問題点を指摘する。
米国ではリフトやウーバーのドライバーは、従業員ではなく独立業者であるため、最低賃金が適用されず、会社からヘルスケアなどの福利を受けることができない。企業間や競争の激化は、ドライバーの労働条件に転嫁されやすく、これまでストライキや提訴に発展するケースが起きている。
カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロー・スクールのVeena Dubal教授は同紙に対し、「彼らのビジネスモデルは、ドライバーのステイタスという未解決の問題に完全に依存している」と述べ、「リスクを労働者に転嫁してきたが、今度は、投資家にもリスクを移転しようとしている」と問題を語った。
リフトは、目論見書(S-1)で、運転手を従業員のクラスに変更することは、ビジネスモデルの大幅な変更を必要とする可能性があるとし、財政上の問題にさらされるリスクがあるとしている。
ドライバーの待遇については、行政から規制を求める声も上がっている。
昨年12月、ニューヨーク市タクシー&リムジン委員会(TLC)は4日、ウーバー(Uber)やリフト(Lyft)、ヴィア(Via)などの配車サービスの運転手に最低賃金を保証する新たなルール「Driver Income and Transparency Rules」を、投票で可決した。
さらに、ニューヨーク州では2018年末に最低賃金が時給15ドル(約1,695円)に引き上げられたほか、有給休暇の義務付けなど、従業員の権利保護に関する規制も強まりつつある。最低賃金を15ドルに引き上げる法案は他州にも広がりつつあり、これまでニューヨーク州のほか、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ワシントンD.Cで法制化されている。