領土拡大は神が与えし運命?トランプ就任演説「マニフェスト・デスティニー」とは?

22

トランプ大統領は20日に開催された就任式の演説で、米国の「黄金時代」が始まると宣言。地球上で最も偉大で最強、尊敬される地位を取り戻すと述べた上で、メキシコ湾の名称をアメリカ湾に変更し、パナマ運河を「取り戻す」とした。さらに、われわれは「明白な運命(Manifest Destiny)」を惑星まで追求し、米国人宇宙飛行士を火星に送って星条旗を植えると約束した。

マニフェスト・デスティニーとは?

アメリカがテキサス併合をめぐってメキシコと敵対し、オレゴン・カウントリー(現在のオレゴン州、ワシントン州、アイダホ州、モンタナ州とワイオミング州の一部)の領有権をめぐって英国と揉めていた1800年代中盤、領土拡張論者の間で、拡大の権利は神から与えられた運命だとする主張が沸き起こった。

明白な運命(Manifest Destiny)』は、ニュース編集者のジョン・オサリバンが1845年の月刊誌『Democratic Reviewt』7・8月合併号の中で初めて用いたとされる。

オサリバンは論説の中で、テキサス併合に関して他国が干渉し、「年々増加する何百万もの人々の自由な発展のために割り当てられた大陸全体に広がるというわれわれの明白な運命の実現を阻止」しようとしていると主張し、「全ての党派は今こそ団結すべきだ」と訴えた。

同年12月に『ニューヨーク・モーニングニュース』に掲載されたオレゴンの領有権に関する論説では、根拠について「神がわれわれに託した自由と連邦自治という偉大な実験を発展させるために、われわれに与えた大陸全体に広がり、所有するという明白な運命の権利によるもの」だと主張。「神が与えた争う余地のない権利を固持し、神が課した崇高な義務を恐れることなく遂行するだろう」と呼びかけた。

Advertisement

当時、必ずしもオサリバンのようなナショナリスト拡張主義が主流だったわけではないという。

国務長官時代にモンロー・ドクトリンを起草したジョン・クインシー・アダムズ大統領は、サリバンの記事の10年前、先住民がメキシコ側に就くことを懸念し、紛争は危険であると警告していた。また、アンドリュー・ジャクソン大統領の先住民の強制移住政策には、人道的観点ではなく、敵対的な集団によって国境を付近が脅かされる危険から、多くの有力者が反対していたという。

Manifest Destinyのアレゴリーとされる絵画『アメリカの進歩』(1872年、ジョン・ガスト作)は、アメリカ合衆国を擬人化した女性「コロンビア」が、明るく照らされた東から暗い西側へと、開拓者たちを先導する姿が描かれている。コロンビアは教科書と電線を携えた進歩の象徴として表現され、その出現に西側の先住民は恐れおののき、バッファローの群れが逃げ出す。

トランプ氏の火星発言に、ザッカーバーグ氏やジェフ・ベゾス氏とともにトランプ一家の隣に陣取ったイーロン・マスク氏はガッツポーズで応えた。Forbes長者番付の上位3人を従え、領土拡大や関税、パナマに執着するトランプ2.0について、エコノミスト誌は「黄金時代」ではなく、資本家の台頭と貧富の差の拡大に象徴される19世紀の「金ピカ時代」への回帰のようだと評している。

Mashup Reporter 編集部
Mashup Reporter 編集部です。ニューヨークから耳寄りの情報をお届けします。