世界一有名な片付けコンサルタント「こんまり」こと近藤 麻理恵さんのネットフリックス(Netflix)オリジナル番組「Tidying Up With Marie Kondo」をめぐり、ネットでは議論が白熱している。
こんまりさんは、2014年発行の「人生がときめく片づけの魔法」の英訳本「The Life-Changing Magic of Tidying up」が、ニューヨークタイムズのベストセラーとなり、2015年には、米TIME誌の最も影響力のある100人に選出された。
きっかけは本の処分のエピソード
放送開始後まもなく、「Tidying Up~」5話で登場した本の片付け方法をめぐり、多くの非難が寄せられ、大きな話題となった。
こんまりさんの提唱する「ときめき」を基準に本を仕分ける方法について、小説家のAnakana Schofieldさんは、「トキメキを引き起こす本、そんなばかげた話はない。 文学は心地良さやなぐさめのためだけに存在するものではない。」と反論。
ワシントンポスト紙の本の批評家、ロン・チャールズ(Ron Charles)は、「私の本の山から、あなたの片付けと、トキメキの手を退けてほしい」というタイトルでコラムを掲載。
ヴァニティ・フェアのライター、Joanna Robinsonさんなどから、本だけは処分することができないという声が相次いだ。
図書館からは、破棄するのではあれば、地元の図書館に寄付してほしいという声も。
本の処分を巡って言い争うのは、止めよう声も上がった。
作家のジョアンナさんは「マリエのことで、アツくなるのはやめましょう。私は作家ですが、それでも大量の本を所有することには合意しません。電子書籍があるでしょう。ばかみたいに大量の本を所有したいなら、それはけっこう。もし誰かが処分したいとするなら、かまうもんですか。他に熱中すべきことはあるでしょう?」と呼びかけた。
議論は人種差別問題にも飛び火
韓国人作家で、子供にダイバーシティの本を推奨するNPO団体We Need Diverse Booksの共同創設者エレン・オー(Ellen Oh)さんは、この非難の背景には、人種差別の問題と、階級差別的思想が根底にあり、「意図的な妨害」だと指摘する。
エレンさんは、子供の頃日本で育ち、日本語を第一言語とする。
「最初は、文化の違い、特にどう翻訳するかニュアンスの欠如によるものではないかと思っていた。アジアの言語は、英語とかなり異なっており、いくつかのものはうまく翻訳することができないと思ったが、そうではないことが分かった。」とウェブメディアのBustleに語った。
先のAnakana Schofield氏が、英ガーディアン(The Guardian)に執筆した記事について、「トキメキ」を意図的に曲解していると批判を述べる。
さらに、今回の炎上騒ぎは、こんまりさんが得意としない英語や、用語をからかうことに焦点が当てられているとし「トキメキに関するネットミームを数多く見ましたが、私の両親の片言英語を聞いた人が、意図的におもしろ可笑しく扱ったのを思い出させる。」と非難。また、多くの本を所有しなければ、賢くなれないというエリート主義や特権主義によるものだと考えを語った。
ツイッターでも議論が白熱している。Jonah Venさんは「ミームや非難は、本質的にアジア人、特に日本文化や影響に対する無教養からくる、人種差別主義だ。」と一連のツイートで非難を述べた。
作家のKat Choさん「有色人種をモンスターと言わないでください。既に疎外されているコミュニティから人間性を奪うような言葉を言わないで。」
ライターのCeleste Pewterさん「誤った理由で、アジア人女性をからかって何の得になるのですか?マーサ・スチュワートだったらそうはならないでしょう?」
多くの人がこんまりメソッドを実践
番組をきっかけに、片付けで人生を変えようと一念発起した人は多いようだ。多くの米国人が衣類や書籍を処分するなど、こんまりメソッドを実践し始めている。
CNNによると、ニューヨークではビーコンズクローゼットなどのリサイクルショップや古着屋などに、大量の洋服が持ち込まれているという。
シカゴの古本屋「Ravenswood」でも、1週間で1ヶ月分の書籍が寄付されたという。ある人は、何千という書籍を処分したいと電話をかけてきて、店主は50箱分の書籍をピックアップしたと語っている。「私たちの店の存在が知られるようになった。」と喜んでいる。