複数の米不動産業界団体は9日、連邦準備制度理事会(FRB)に宛てた書簡で、さらなる利上げを検討せず、住宅金融市場が安定化するまで保有する不動産担保証券を売却しないと市場にメッセージを発するよう訴えた。
書簡を送ったのは米抵当銀行協会(MBA)と全米リアルター協会(NAR)、全米住宅建設業協会(NAHB)の3団体。
書簡では、FRBの一連の利上げにともなって、住宅のアフォーダビリティが悪化し、住宅ローン申請と住宅販売数の低下に苦しむ不動産業界にさらなる混乱をもたらしていると指摘。これに歴史的な住宅不足が追い討ちをかけているとした。
MBAの6日時点の発表によると、30年固定住宅ローン金利は4週連続で上昇、7.53%となり2000年11月以来の高水準を記録した。この影響で、ローンの申請件数は1996年以来最低の水準に低下した。
高金利と住宅価格の高騰で、アフォーダビリティはますます悪化している。CNNによると、中央値の価格の住宅を20%の頭金を払って購入した場合、元金と月々の利息の支払いは2,440ドルで、2年前から1,172ドル以上上昇した。一般的な世帯収入に占める割合は38.6%で、アフォーダビリティは、1984年以来最悪の水準だという。
書簡ではまた、現在約3%にまで拡大している30年固定住宅ローン金利と10年債利回りのスプレッドについて、「歴史的な高水準であり、これは連邦準備制度の方針が向かう方向性について深刻な不確実性を示している」と指摘した。
さらに、ここ数ヶ月間のインフレの主な要因は住居費で、7月の消費者物価指数の上昇率の90%は住居費のインフレによるものだったと指摘。「広範なインフレとの戦いを助ける効果的なアプローチは、手頃な価格の住宅の建設を促進することにある」と強調した上で、スプレッドの拡大や金利のさらなる上昇が続くと、土地開発や住宅建設が制限され、住宅供給が悪化し、結果として経済目標の達成は困難になると主張した。
市場に対して「さらなる利上げを検討しない」ことと「住宅金融市場が安定し、スプレッドが正常化するまで、FRBは保有する不動産担保証券を売却しない」とする明確な声明を発表することを強く求めると訴えた。
2点を明確にすることで、市場の確実性が増し、投資家にとってボラティリティーが軽減されることにもなると加えた。
FRBは2022年3月以来、11回の利上げを実施している。現在の金利の誘導目標は5.25%から5.5%で、22年ぶりの高水準に達している。9月の会合では金利を据え置きとしたが、パウエル議長は「適切と判断されるならば、準備しているさらに引き上げる準備がある」と、さらなる利上げに含みを残していた。