次の議会で下院議長就任が確実視されている共和党のケビン・マッカーシー院内総務(カリフォルニア)は、2020年大統領選を目前にニューヨークポスト紙が発表したハンター・バイデン氏の疑惑報道(通称:ラップトップ報道)の元になったEメールを、ロシアによるデマだとした政府の元情報当局者ら51人を召喚する意向を示した。
10日、Foxニュースの番組に出演したマッカーシー氏は、「ツイッター・ファイルズ」で示されたポスト紙に対するツイッター社の検閲の経緯を「とんでもない」と批判した上で、「ハンター・バイデンの情報は全て誤りで、ロシアの共謀だと主張する書簡に署名した情報機関のエージェント51人は、その多くがセキュリティークリアランスを有していた」と指摘。委員会に召喚して「なぜ書簡に署名したのか、なぜ米国民に嘘をついたのか」証言を求めると述べ、「クラッパーとブレナン、政府が与えた信用をより多くの情報に使用せず、政治的目的に使い、なぜ国民に嘘をついたのか」と、理由を問いただす意向を示した。
ツイッター社が、ポスト紙の記事を「ハッキングされた素材の配布に関するポリシー」に違反したとして制限した数日後、ジェームズ・クラッパー元国家情報長官やジョン・ブレナン元CIA長官をはじめとする元当局者ら51人は、連名による書簡を公表。同紙が記事のもとにしたハンター氏のEメールは「ロシアの情報操作の古典的な特徴」を有していると指摘し、「われわれの経験から、ロシア政府がこの問題で重要な役割を果たしていることを深く疑っている」と、ツイッター社の判断を後押しする見解を発表した。
ツイッター・ファイルズは、イーロン・マスク氏主導のもと、ジャーナリストらが旧体制のツイッターの内情を調査、報告するプロジェクトで、12月2日のマット・タイ―ビ氏の第一弾報告を皮切りに、現在4弾まで進んでいる。ハンター氏の記事をめぐる措置について、社内で根拠が曖昧だと懸念を示す声が上がっていたほか、判断に深く関与した幹部自ら「事実は不明のままだ」と明かしていたことが判明した。タイービ氏は政府の関与を示す証拠は見当たらないとしたが、9日の第3弾報告では、同幹部が選挙期間中に、連邦捜査局や国土安全保障省、さらに国家情報長官室と毎週の定例会議を開いていたことが明らかにされた。
なおタイービ氏の投稿を受けて、次の議会で下院監視・政府改革委員会の議長に就く予定のジェームズ・コーマー議員(共和党 ケンタッキー)は、ラップトップ報道の制限に関与したツイッター社員を、委員会に召喚する意向を示している。
マッカーシー氏はまた、番組内で、グーグルとフェイスブックについても、「同様」の調査を実施すると表明。「彼らは民主党の部隊で、政府の部隊になっていた」と非難した。
NYポスト紙 ハンター・バイデン「ラップトップ報道」
2020年大統領選を約3週間後に控えた10月14日、ニューヨークポスト紙は、ウクライナにある天然ガス会社ブリスマ社の幹部からバイデン氏の息子、ハンター氏に送られたと見られるEメール文書を引用し、ハンター氏が、同幹部と当時副大統領だったバイデン氏の面会を仲介したと報じた。ポスト紙が記事を投稿すると、ツイッターは、同社のアカウントをロック。さらに記事のリンクの共有をブロックするなど、配布制限を設けた。
ポスト紙はこの他にもメールやハンター氏の画像を掲載したが、一連のデータの出元を、デラウエアにある修理店に持ち込まれたハンター氏のパソコンから回収されたものだと説明。店主が作成したハードドライブのコピーを、ルディ・ジュリアーニ氏を経由して受け取ったとしていた。
複数の主要メディアは、当時、ラップトップのメールデータの信頼性を確認できないとしていたが、今年3月にニューヨークタイムズ紙とワシントンポスト紙がハンター氏のものと認め、11月にはCBSニュースが信憑性を確認したと発表した。