大手メディアがハリス氏の支持表明しないワケ

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トランプ氏は先月30日にノースカロライナ州で開いた選挙集会で、米有力紙が大統領候補者の支持表明を見送ったことに言及。「彼らは民主党だけを支持してきた。彼らが実際に言っているのは、この民主党は良くないということだ。そして、彼らは言いたがらないが、私は良い仕事をしていると思っている」と自画自賛した。

ワシントンポストとロサンゼルス・タイムズ、USAトゥディのほか200媒体以上を傘下に持つ米国最大の新聞社ガネットは、今年の大統領候補者の支持を見送った。その判断を巡り、賛否の声が寄せられている。

ワシントンポスト紙は25日、支持を見送った1960年(ジョン・F・ケネディ対リチャード・ニクソン)と1972年(ニクソン対ジョージ・マクガヴァン)に掲載した論説委員会の記事を引用しながら、「大統領候補を支持しないという原点に立ち返る」と発表。「われわれの職務は、党派に属さないニュースや、示唆に富んだ論説委員会の見解を全てのアメリカ人に提供し、読者が自分で決断を下す助けとなること」「世界で最も重要な都市の新聞として独立性を保持すること」と述べ、今後も支持を表明しない方針を示した。

この発表に対し、バージニア大学のシヴァ・ヴァイディアナサン教授は、英紙ガーディアンの論説で「米国でファシズムが台頭する可能性があるにも関わらず、富と安全を確保しながら、次政権の性質により利己的な関心を抱いている」と主張。7,500以上の米政府機関にサービスを提供するアマゾン・ウェブ・サービスとポスト紙のオーナー、ジェフ・ベゾス氏を批判した。

同紙の発表後、48時間以内に20万人が有料購読を解約するなどボイコット騒ぎに発展。ベテラン記者のロバート・ケーガン氏が辞職したほか、コラムニスト11人が連名で非難声明を発表した。

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ロサンゼルス・タイムズに関しては、オーナーの医師パトリック・スーン・シオン氏が23日、支持を表明しない方針を表明し、Xに経緯を投稿した。

シオン氏によると、「明確かつ公平な情報を並べることで、読者が今後4年間の大統領にふさわしい人物を判断できる」という考えの元、論説委員会は「両候補者の在任中の政策に関するポジティブな側面とネガティブな側面、それらが国家に及ぼした影響に関する事実分析」と共に、「今回の選挙戦で両候補者が表明した政策と計画、今後4年間の国家に対する潜在的な影響に対する理解」を提示するよう求められたという。しかし、委員会はこれらの方法を「採用する代わりに、編集委員会は沈黙を守ることを選択し、私はそれを受け入れた」という。

LAタイムズの組合はシオン氏の声明に「責任を論説委員会のメンバーに不当に押し付けている」と反発。社説面の編集長マリエル・ガルザ氏のほか、ピューリッツァー賞受賞記者ロバート・グリーン氏とカリン・クライン氏が相次いで辞任を表明した。

ガルザ氏は25日、コロンビア・ジャーナリズム・レビューのインタビューで、トランプ氏が「民主主義に危険」「大統領職にふさわしくない」と主張してきた同紙が、ハリス氏を支持することは「論理的な次のステップ」であり、「読者に疑念を抱かせる可能性がある」と批評している。

オーナーの言い分は?

社内外からの批判を受け、ベゾス氏は28日、ワシントンポスト紙に論説を掲載。アマゾンやブルーオリジンなど自身が所有する事業との関係性を否定した。

「ギャラップの世論調査では、メディアの信頼性と評価は議会より下がっており、私たちの職業は今や最も信頼されていない」と指摘。信頼性の欠如は、メディアだけでなく「国家の問題」との懸念を示した。新聞も投票機のように「正確かつ正確と感じてもらう必要がある」と述べ、信頼性を高めるべきだと主張した。

新聞が大統領候補の支持を表明することは「選挙結果を左右するものではない」ことに加え、「偏見や非独立性という認識をもたらす」と主張。今回の判断は「原則に基づいた決断であり、正しいこと」「正しい方向へと向かう意義ある一歩」と述べた。

また、支持表明しないと決定した日、ブルーオリジンの最高経営責任者がトランプ氏と面会していたことは「事前に把握していなかった」と説明。これらの企業を所有する自身は、ポスト紙にとって「複雑な存在」と認めつつも「いかなる見返りはない」としている。

ベゾス氏は、ワシントン・ポスト紙とニューヨーク・タイムズ紙は「ますます特定のエリート層とだけ話をするようになっている」とも指摘。一方で、事実検証されない情報が溢れる中、「世界はこれまで以上に信用できる独立したボイスを必要としている」と述べ、新興のポッドキャストやソーシャルメディアとの戦いに勝つためには「新たな腕力が必要」と綴った。

なお、ガネットの広報担当者は28日、The Hillの取材に「個別の候補者の支持ではなく、地域社会に影響を与える重要な州または地方の問題について支持を表明する」と方針を語っている

USAトゥデイは2016年の大統領選で、トランプ氏は「公職に不適格」と不支持を表明したものの、ヒラリー・クリントン氏への「全面的な支援ではない」と主張していた。2020年はバイデン氏を支持していた。

Mashup Reporter 編集部
Mashup Reporter 編集部です。ニューヨークから耳寄りの情報をお届けします。