1月にホワイトハウスへの復帰を果たしたメラニア夫人。まだ数えるほどしか公の場に姿を表していないが、着こなしが以前にも増して「男性的」だと話題になっている。
初の単独公務として注目を集めた先週の会合では、幅広のネクタイ、白シャツ、パンプスにタンカラーのスリーピース姿で議事堂に現れた。用意された原稿を真剣な表情で読み上げ、ディープフェイクポルノなど同意のない性的画像の拡散を連邦レベルで犯罪化する「TAKE IT DOWN法」の成立を呼びかけた。
その約1週間前、ホワイトハウスのイーストルームで開いた全米州知事協会主催の晩餐会では、タキシード、シャープな襟のタキシードシャツ、ポインテッドトゥのパンプスを着用。夫と並んでゲストを出迎えた。
ホワイトハウスのオフィシャル写真からも、1期目と異なる意気込みがうかがえる。8年前はソフトフォーカスしたフェミニンな雰囲気のカラー写真だったが、今回はモノクロ写真を採用。撮影は前回と同じベルギー生まれのフォトグラファー、レジーン・マオーが手がけた。ドルチェ&ガッバーナのタキシードにカマーバンド、白シャツに身を包んだメラニア夫人は、鏡のように反射する机に両手を突き、その背景にはワシントン記念塔が聳える。どこぞのCEOのような風格が漂うが、VOGUEのライターはこれを「アプレンティス(トランプ氏主演のリアリティTV)のコスプレ」、「フリーランスのマジシャン」と酷評し、保守派から批判を招いた。
元モデルのメラニア夫人は、ファッションをコミュニケーションツールに使うことがある。2018年にテキサスの移民施設を訪れた際に「I Really Don’t Care」と描かれたZaraのジャケットを着用した件について、どう思われようが気にしないという「メディアに対するメッセージ」だったと回顧録『Melania』の中で明かしている。
それではスーツ姿はどんなメッセージだろうか。
本人はスタイルの変化について語っていないものの、ニューヨークタイムズのファッション評論家、ヴァネッサ・フリードマン氏は、ポートレートは海外ドラマ『ハウス・オブ・カード』でファーストレディから大統領の座に上り詰めたクレアを彷彿とさせると指摘。夫人が(重役会議室のような)「テーブルの主導権を握っている」という明らかな意思表示だとした。
夫人は就任直前のFOXニュースのインタビューで、「一部の人々は、私を大統領の妻としてしか見ていない」と述べ、「私は自分の足で立っている独立した存在だ」と強調。「私には自分の考えがあり、イエスとノーの判断も自分次第。夫の言動にいつも同意するわけではない」と語っている。
NFT販売事業や回顧録の出版、就任直前にリリースしたミームコイン、自身のドキュメンタリー映画のプロデュースなど、過去4年間でさまざまな事業に着手したメラニア夫人。パワースーツは、単なる夫の補佐役から脱却し、独立した存在として自分を確立するブランディングの一環なのかもしれない。