インペリアル・カレッジ・ロンドン(以下、ICL)は1月27日、ICLの研究チームが、地球に存在する揮発性物質の1種亜鉛(Zn)の約半分が小惑星帯(アステロイドベルト)よりも外側に由来すると考えられることを明らかにしたと発表した。亜鉛は生命の重要な構成要素の1つになる。なお、小惑星帯とは、火星と木星の間にある多数の小惑星からなる領域で、ここから外側には、木星、土星、天王星、海王星などがある。
揮発性物質とは、比較的低い温度で、蒸発する物質をいう。この揮発性物質には、水以外にも生命に最も広く共通にみられる6つの元素が含まれている。そのため、揮発性物質の存在は、地球における生命の誕生にとって、重要な意味を持ったと考えられている。
亜鉛(Zn)は、このような揮発性物質の1種で、生命活動において、重要な役割を果たしている。例えば、DNAの複製やタンパク質の合成などで重要な役割を果たす。
研究チームは、小惑星帯から内側に由来する非炭素質隕石11個とそれよりも外側に由来する炭素質隕石7個について、亜鉛の同位体5つの存在比率を調べ、地球におけるそれと比較した。ちなみに、亜鉛の同位体とは、原子番号は同じだが、中性子の数が異なるために、質量が異なる亜鉛をいう。
その結果、地球の亜鉛の約半分が、小惑星帯より外側に由来すると考えられることが解った。
これまでの研究では、地球はほぼ小惑星帯の内側の物質で形成され、地球に存在する揮発性物質もほぼ小惑星帯から内側に由来すると考えられてきた。
しかし、今回の研究成果によれば、地球の揮発性物質の形成に小惑星帯よりも外側の物質が大きな役割を果たしたことになる。
さらに、亜鉛などの揮発性物質を高濃度に含む物質は水に比較的に豊富に含まれている。そのため、研究チームによれば、今回の研究成果は、地球における水の起源を探る重要な手掛かりにもなるという。
今回の論文の上級著者であり、ICL地球科学工学部教授であるマーク・レーカ・ムパー氏は「もし、小惑星帯よりも外側の物質の貢献がなかったならば、地球における揮発性物質の量は今日みられるよりももっと少なくなり、地球は乾燥し、生命が維持され豊かに栄えることはなかったかもしれない」と語っている。
研究チームは、今後、火星や月の隕石についても分析。月は今から約45億年前に原始的な地球と火星サイズの原始惑星が衝突しその破片から形成されたとするジャイアントインパクト説の検証など研究を進めていきたいとしている。
(翻訳・執筆/飯銅重幸)