ニューメキシコ大学の新たな研究により、人間の脳内のプラスチック粒子蓄積に関する懸念すべき結果が明らかになった。
- 脳内に蓄積したマイクロおよびナノプラスチック濃度は他の臓器より約12倍高い
- 8年間で脳内のマイクロプラスチックの濃度が約50%上昇
- 脳内プラスチックの75%がポリエチレン
- 2024年の脳組織サンプルでは、1グラムあたり4,917μgのプラスチック粒子を検出
- 認知症患者の脳では、さらに高濃度のプラスチック粒子を検出
マイクロプラスチックは5mm以下の粒子、ナノプラスチックは0.1μm(マイクロメートル)以下としている。研究チームは、ニューメキシコ州医療捜査局から提供された脳組織サンプルを調査。平均2016年に遡る古いサンプルと2024年に収集された組織と比較した。2024年のサンプルでは肝臓と腎臓の濃度はほぼ同様であったが、脳はその12倍に達し、2016年に脳のサンプルと比べると濃度が約50%上昇していることがわかった。2024年の脳組織のプラスチック濃度は1グラムあたり4,917μgで、一般的な脳の重さを1,400gとすると7g近くに相当する。さらに研究対象を広げ、2019年から2024年にかけて収集された12件の認知症症例の脳組織を分析した結果、脳のプラスチック濃度は中央値が1グラムあたり26,076マイクログラムで、正常な前頭皮質群のいずれよりも高いことが明らかになった。
カンペン博士は、脳内のプラスチック濃度が高いことが認知症の症状を引き起こしたかどうかは示せないとしており、病気のプロセス自体によって蓄積するだけかもしれないと強調している。またプラスチックがどのような影響を及ぼすかは不明であるとも指摘している。
侵入経路は?
カンペン博士は、マイクロプラスチックの大半は食物、特に肉から摂取されていると見ている。プラスチックに汚染された灌漑用水で育った作物を家畜に与え、そこからできる肥料を畑に戻すサイクルを通じてある種の「生物濃縮」が起きている可能性があるとした。また、食料品店で購入した肉から高濃度のプラスチックを検出したとも加えた。
「世界中でプラスチック生産は衰えることなく続いており、たとえ明日停止されたとしても、それは時限爆弾となるだろう。既存のポリマーが微粒子に分解されるまでには何十年もかかるため、環境中のマイクロプラスチックやナノプラスチックの濃度は今後何年にもわたって増加し続ける」。
プラスチック粒子を避けるには
完全に回避するのは困難だが、セントワシントン大学の研究者は以下の対策を推奨している。
- 使い捨てプラスチック製品を避ける
- 加工肉の摂取を控える(チキンナゲットなどにより多く含まれる)
- プラスチック製のまな板を木製に変える
- プラスチック製保存容器をガラス製に替える
- 熱い食べ物や飲み物をプラスチック容器に入れない
- プラスチック製品を電子レンジで加熱しない
- 紅茶が好きなら、ルースリーフを使用する
- 部屋の掃除を頻繁に行う
- 衣類の洗濯頻度を減らす
これらの対策を日常生活に取り入れることで、プラスチック粒子への曝露を減らすことができるかもしれない。