ロシアのタス通信は14日、ロシア国防省の発表として、海軍の黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が沈没したと伝えた。原因について「弾薬の爆発が起こした火災で損傷した船体が、港に曳航中に安定性を失い、嵐の海の中、船が沈んだ」と説明した。
この前日、ウクライナのオデーサ州のマキシム・マルチェンコ知事は、ウクライナ軍の対艦巡航ミサイル「ネプチューン」が、ロシア黒海艦隊の旗艦モスクワを攻撃し、深刻な損害を与えたと発表した。
ウクライナ側は後に情報を更新し、モスクワがネプチューンミサイルで深刻なダメージを受け、火災が発生したと説明。「艦隊の他の部隊が救助を試みたが、嵐と弾薬の強力な爆発が巡洋艦を転覆させ、沈み始めた」と発表していた。
ロシア側は当初、モスクワで、弾薬の爆発による火災が発生し、重大な損傷を受けたと認めたものの、ウクライナ側の発表に言及せず、被害の原因を調査中と説明。およそ500人の乗組員が他の船に避難したと発表した。
この後、ロシアの国営通信社は、火災は「局所的」で「弾薬の爆発は止められた」といったロシア国防省の説明を伝え、船は浮力を維持しており、主要なミサイル兵器の損傷を免れたと報じていた。
ワシントンポスト紙によると、モスクワのシンクタンク「戦略技術分析センター」は14日、テレグラムの投稿を更新し、船は沈没したとの見解を示し、「ロシアの黒海艦隊の旗艦であるモスクワは、オデーサとムィコラーイウの沿岸からネプチューンによる攻撃を受けた」とウクライナ側と一致する説明を行った。また、ミサイルが命中する前に、ドローンが妨害したとも投稿しているという。
ロシア側はウクライナによるミサイル攻撃を受けたことを認めていないが、モスクワの喪失は、第2次世界大戦以来最大の海軍艦艇の沈没であるとともに、ロシア軍にとって重要な意味を持つという。
国際関係が専門の極東連邦大学のArtyom Lukin教授は同紙に、モスクワには主な戦略的価値はないものの、黒海艦隊の旗艦として象徴的な重要性を持っていると説明している。また、シンガポールの南洋理工大学の教授で、海洋安全の専門家、コリン・コウ教授も「ロシア海軍の水上戦闘員だけでなく、旗艦の喪失は、ロシア人にとって心理的な打撃となる」と話している。
「モスクワ」とは?
英インデペンデントによると、モスクワは1982年に就役したロシア海軍のスラヴァ級ミサイル巡洋艦で、700km先の標的を攻撃することが可能な「ヴァルカン」対艦巡航ミサイルを16基搭載している。クリミア半島のセヴァストポリを母港としている。
1万2,500トンの大型船で、通常500人前後の乗組員が乗船する。ロシアのインターファックス通信は昨年、「黒海で最も本格的な艦船」と紹介している。
S-300F艦対空ミサイル・システムを64基備え、ウクライナ南部に対するロシアの防空として重要な役目を担っているという。Naval Newsは以前「長距離兵器を搭載していることで、パトロールを担当するエリアから黒海北部の大半をカバーすることができる」と伝えている。ただし、専門家からはモスクワの防衛機能について、時代遅れとの指摘も上がっている。
ロシアの侵攻開始直後に注目された、スネーク島に駐留するウクライナ軍の国境警備兵らに対する攻撃に関わったとされている。