映画のサブスクリプションサービスを展開するムービーパス(MoviePass)は13日、サービスを停止することを発表した。
同社はホームページで「資本強化の試みが成功しなかった」と述べ、契約者に対して「適切な返金」を行うと発表。サービスは14日の午前8時に停止する。
ムービーパスは2011年に、定額料金で月3本の映画を鑑賞できるサービスをスタートした。その後、2017年にヘリオス・アンド・マシソン・アナリティックス社(Helios and Matheson)が買収。同年、月額9.95ドルで1日あたり1本鑑賞できるサービスモデルをスタートし、注目を浴びた。2016年の北米の映画チケットの平均額は8.65ドルで、2本見るだけで元が取れるサービスは、映画ファンに広くアピール。一部報道によると、2016年に約2万人だった会員数は、2018年に300万人にまで拡大した。
会員数を大幅に伸ばす一方、ビジネスの継続性について常に懸念がささやかれてきた。ムービーパスのモデルでは、会員が視聴するたびに、ムービーパスが劇場にフルプライスを支払う。都市部では一本の映画料金が、月額料金を上回る地域もある。ミッチ・ロゥ(Mitch Lowe)最高経営責任者は、地方の会員獲得を強化することで、都市部のコストを相殺するなどの考えを述べていた。
業界のゲームチェンジャーとして注目されたことは、劇場大手からの反発を招いた。米映画館チェーン大手のAMCは、プログラムへの不参加を示唆するなど、協力を拒否。独自のサブスクリプションプラン(A-List)の立ち上げへとつながった。
NYタイムズによると、ヘリオスの純損失は2016年の740万ドルから2017年には1億5,080万ドルへと拡大。さらに、2018年7月、同社は米証券取引委員会に対し、単月で4,500万ドルの損失の可能性を報告した。MoviePassでは損失を抑えるため、ピーク時の追加料金や同一タイトルの視聴制限など、サービスに修正を加えてきたが、支払いが困難となり、同月、多くの映画館でサービスが利用停止となる事態に陥った。ヘリオスが急遽500万ドルを借り入れ、まもなくサービスが再開されたが、アプリが利用できないなどのシステム障害が相次いだ。この翌月、同社は毎日1本のサービスを、月3本へと大幅に縮小することを決定した。
以降、サービス継続に向けて複数回にわたって内容を変更したが、度重なる変更とサービス低下により会員数は大幅に減少。CNBCによると2019年4月の会員数は22万5,000人にまで低下した。今年7月には、アプリ改善のために、サービスを一時中断すると発表していた。
親会社のヘリオスは13日、戦略的審査委員会を立ち上げ、企業全体の売却やムービーパスを含む資産の売却、再編成を含む「戦略的かつ金融代替案」を模索すると発表した。ムービーパスについて「サービスが継続できるか予想ができない」としつつ、「ムービーパスの運転資金の調達を探る努力を継続するが、資金調達が委員会に承認される形で可能かどうかは保証できない。」と述べた。