メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティー(MTA)は19日、170億ドルの2020年予算案を役員会で承認した。予算には今後4年間で500人の警察官を新規雇用する費用、2億4,900万ドルが含まれる。
NY地下鉄には現在2,500人の警察官が配備されており、今後4年間で20%増員する。人数を増やすことで、無銭乗車の増加に歯止めをかけ、職員へのハラスメントや、犯罪の取り締まり、ホームレス対策を強化する予定だ。
Patchによると、NYPD犯罪統計で地下鉄内でのハラスメントは167%増、憎悪犯罪は50%増、強盗は11.5%増となっている。トランジット・ワーカー・ユニオンによるとMTA職員に対する暴行は39%増加しているという。
貧困層と有色人種の取り締まりと反発
警察官の増員計画は、6月にアンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)ニューヨーク州知事が発表していた。発表以来、増員は有色人種を標的とし、貧困層の取り締まりにつながるとして、交通機関の擁護団体「ライダース同盟」(Riders Alliance)などを中心に抗議活動が行われてきた。
最近では、地下鉄でチュロスや菓子などを販売していたヒスパニック系の女性や、黒人の少年が相次ぎ拘束され、貧困層の軽犯罪を取り締まっていると論議を巻き起こした。
予算の承認を受け、ニューヨーク市のブロンクスとクイーンズより選出された進歩派のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス(Alexandra Ocasio-Cortez)下院議員らは、クオモ知事に対し書簡で反対を表明した。書簡では「勤勉に働いているが、2.75ドルの運賃を払えない人々を逮捕することは、貧困の犯罪化だ」と述べ、「貧困層を処罰するのは、コミュニティを脅かし、安全な環境を作り出すことにならない。」と非難。雇用計画の中止および、サービスの改善を求めた。
これらの意見に対し、MTA役員メンバーの一人、サラ・ファインバーグ(Sarah Feinberg)氏はツイッタ−で、反対派の主張は「政治的な駆け引き」に基づいたものだと反論。暴行などの防止対策が早急に必要だと主張した。
増員計画を支持するパット・フォイエ(Pat Foye)MTA会長も声明で「公共の安全に関して、われわれは政治に関与しない。」と述べ、「500人の警察官は、800万人の利用者の安全とクオリティ・オブ・ライフを確保するのに役立つ。」と反論している。