ニューヨークのユダヤ遺産博物館(museum of Jewish Heritage)は8日より、大規模なホロコースト展「Auschwitz. Not long ago. Not far away」の開催をスタートした。

展示会では、ナチスのイデオロギーが、いかにしてポーランドの町オシフェンチム(Oświęcim)を支配し、110万人以上のユダヤ人を大量虐殺へと導いたのかその過程に迫る。
ユダヤ人の移送に使用されたドイツ製の貨物列車や、アウシュビッツ3号収容施設の一部、ピカソが描いた囚人のリトグラフ、スーツケースや眼鏡、靴など囚人らの遺品や自伝など、ポーランドのアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館(Auschwitz-Birkenau State Museum)を中心とした収蔵品700点及び400枚以上の写真やドローイングなどを包括的に展示する。多くの展示物は、北米で初めて公開される。


強制収容所へ移送された約110万人のユダヤ人のうち、約90万人は収容所に入ることなく、ガス室や火葬場などで殺害された。アウシュヴィッツ収容所では、ユダヤ人のほかポーランドの政治犯、シンティ・ロマ人、ソ連の戦争捕虜、エホバの証人、同性愛者、身体障害者、犯罪者ら20万人も犠牲となった。


ユダヤ遺産博物館では、ホロコースト生存者のアーティスト、アルフレッド・カンター(Alfred Kantor)の150作品以上のスケッチや、ダビッド・オレール(David Olere)の絵画、音楽家ルイ・バネット(Louis Bannet)のトランペットも展示される。

trucks.”Credit line: Gift of Alfred Kantor, Museum of Jewish Heritage, NY
東洋のオスカー・シンドラーと称されるリトアニアの外交官、杉原千畝が発行した査証(ビザ)。

ヒトラーの側近ハインリヒ・ヒムラー(Heinrich Himmler)のヘルメットや、ルドルフ・ヘス(Rudolf Höss)収容所長の私物、ナチス親衛隊(SS)の使用したガスマスクのほか、1551年にフェルディナント一世(Ferdinand I)が公布した反ユダヤ主義宣言も展示。フェルディナント一世の宣言書は、400年後の1940年ラインハルト・ハイドリヒ(Reinhard Heydrich)からドイツの政治家でヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング(Hermann Göring)へ手渡された。

アウシュビッツ・ビルケナウ記念財団(Auschwitz Birkenau Memorial Foundation)の創設者で、世界ユダヤ人会議(World Jewish Congress)のロン・ローダー(Ron Lauder)会長は「73年前、世界が忘れることのできないアウシュヴィッツの写真を見た後、もうナチと関わりたがる人などいないと思った。しかし3世代を経た今日では、人々はこの出来事を忘れてしまったか、知らない人もいる。この展示会は、最も明確な形で、反ユダヤ主義が最終的にたどり着く場所、そして世界が二度と向かってはならない場所ということを、私たちに思い出させてくれる。展示会のタイトル「アウシュビッツ・ノット・ロング・アゴー・ノット・ファー・アウェイ」は、この歴史が、それほど遠い昔のことではなく、最近の事であるという点で相応しい」と声明で述べた。
展示会は、歴史学者のロバート・ヤン・ヴァン・ペルト(Robert Jan van Pelt)博士や、マイケル・バレンバウム(Michael Berenbaum)博士らがキュレーションを務めた。
昨年スペインのマドリードで開催され、期間を2度延長し、60万人以上を動員し話題となった。ニューヨークでの開催は2020年1月3日まで。

Museum of Jewish Heritage
営業時間:日曜日〜木曜日:午前10時〜午後9時まで(最終入場は午後7時)
金曜日:午前10時〜午後5時まで。(最終入場は午後3時)
入場料金:大人16ドル、シニア12ドル、学生10ドルほか
場所:36 Battery Pl, New York, NY 10280, USA
期間:2020年1月3日までの開催
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