1日、マイケル・ジャクソンの伝記ミュージカル「MJ:The Musical」が開幕。ブロードウェイのニール・サイモン・シアターに、映画監督のスパイク・リーや俳優ジョエル・グレイ、ソニー・ミュージックのダグ・モリス最高経営責任者、人権活動家アル・シャープトンら著名人のほか、マイケルの子供のパリス、プリンス、ビギ・ジャクソンも鑑賞に訪れたと報じられた。
作品は、1992年に始まった4大陸ツアー「デンジャラス・ツアー」の制作過程に焦点を当てたもので、2度のピューリッツァー賞受賞歴のあるリン・ノッテージの脚本をもとに、クリストファー・ウィールドンが監督・振付を担当。マイケル・ジャクソン遺産財団の協力によって制作された。マイケル役のマイルズ・フロストは、今作でブロードウェイデビューを果たした。「スリラー」「ビリー・ジーン」「今夜はドント・ストップ」「スムーズ・クリミナル」をはじめ、数々のヒットナンバーとともにポップの帝王の半生が描かれる。
児童性的虐待疑惑は封印?
レッド・カーペットで出演者らにインタビューをしたバラエティ誌の記者、マイケル・アプラー氏は、ツイッターで、児童静的虐待疑惑に関する質問をしたことで、追い出されたと明かした。
アプラー氏によると、共演者のクエンティン・アール・ダリントンらに話を聞いていたところ、主催者側の担当者が「君が困難な質問をしていると耳にした」と遮り、退場を促された。担当者は「オープニングナイトではダメだ。本当の質問をしたいなら、キャストとインタビューのスケジュールを設定するように」と話したという。
アプラー氏は「これがみんなのブロードウェイさ」と皮肉まじりに述べつつ、「ブロードウェイとメディアの関係、意義ある批判を排除しながら、この主題を扱うミュージカルを成功させようという制作陣の考えに深刻な疑問を呈している」と投稿した
タブロイド紙から始まったマイケル・ジャクソンの児童性的虐待疑惑について、警察が捜査に動いたのは、ツアー開始の翌年の1993年。同年8月、13歳の少年を含む4人の児童を性的虐待した疑いをめぐり、ロサンゼルス警察が捜査に着手したと報じられた。
この翌月、13歳の少年の家族が「子供が繰り返し性的暴行を受けた」として、マイケル・ジャクソンを提訴。弁護側はゆすりと主張し、疑惑を否定したものの、和解金を支払うことで合意に至った。
翌年、一年に及ぶ捜査の上、検察は不起訴を決定している。
2003年には、ネバーランドで当時13歳だった少年に性的虐待をしたとして逮捕・起訴されたが、裁判で、すべての罪状で無罪となった。ただし、他界から10年後の2019年、10代の時に性的虐待を受けたとする男性らの告白を元にドキュメンタリーが製作されるなど、いまだに疑惑の噂が絶えない。
作品を片手落ちとする論調も見られる。
ニューヨークタイムズは、MJは「正確な姿を見つめていない」と題した記事で、「大きな話」が描かれていないと指摘。「マイケル・ジャクソン財団の特別なはからい」で制作されたショーは「基本的に公式の伝記」とした上で、「リン・ノッテージは明らかに妥協している」「些細な奇妙な点に触れているが、最も厄介な疑惑は避けている」と批判した。さらに、マイケルの性格が深く描かれておらず、マイルズ・フロストのパフォーマンスは、まるでディズニー・イマジニアリングの技術者らが製作した「アニマトロニクス」のように見えてしまうと、厳しい言葉で形容した。
ニューヨークポスト紙は「好都合な掛け合いは、マイケルジャクソン財団の弁護士が、修正液とペンを使って共同執筆したかのように感じる」と酷評。「彼の人生の最もドラマチックな部分を飛ばすことで、ノッテージは、作品とアーティストを切り離そうとしている」と批判した。