米航空宇宙局(NASA)は、2040年までに3Dプリンターを月に打ち上げ、住宅を建設する計画だという。
ニューヨークタイムズによると、建物は宇宙飛行士だけでなく民間人が使用することを想定している。1972年のアポロ17号以降、有人月探査を達成していないことから、計画のタイムラインに対して野心的すぎるといった声がある一方、NASAの科学者らは、ベンチマークを着実に達成し続けることができれば、2040年の目標は実現可能だと考えているという。
米政府は有人宇宙飛行の再開を目指すアルテミス計画のもと、昨年11月にケネディ宇宙センターからアルテミス1号を発射した。月周回軌道に投入した後、無事に地球に帰還させた。アルテミス2号は、史上初の女性と黒人を含む 4 人のクルーを乗せて同じ経路を10日間飛行する予定で、2024 年 11 月に打ち上げを予定している。2025年には有人月面着陸を計画しており、その後さらに2つのミッションを予定している。
住宅構想では、テキサスの建設テクノロジー企業、ICONが3D建設システムの開発を手がける。NASAは昨年、同社と約6,000万ドルの契約を締結したことを明らかにしている。材料は現地調達する予定で、月表面にある岩や鉱物のかけら、塵などから作られる特別なコンクリートを使用するという。建設システムは地球から技術者が制御する計画で、すでに技術者向けの授業も開始されている。
科学者らは、住宅の市場価値や所有権について検討するのは時期尚早だと話しているという。なお1979年に国連総会で採択された月協定では、月は「人類の共同財産」であり、月の表面と地下、その一部や天然資源はいかなる国家の所有にも帰属せず、基地や施設の設置は、その地域の所有権を生じさせるものではないとしている。
アメリカでは住宅危機
一方の米国では、供給不足と価格高騰、住宅ローン金利の急上昇によって住宅取得をめぐる環境がますます悪化している。
Realtor.comは住宅不足は危機レベルに到達していると指摘。推計2,300万~6,500万戸が不足しているとした。今年2月に6%だった30年固定平均住宅金利は、8月に約20年ぶりに7%を突破した。今週は7.72%まで上昇したと報じられた。
2022年に急騰した住宅価格の中央値は、2023年第1四半期に横ばいまたは下落したが、その後2四半期連続で上昇し、第3四半期は前年同期比6.5%増の35万1,250ドル(約5,240万円)となった。
ATTOMの調査によると、住宅ローンの支払いと損害保険、住宅ローン保険、固定資産税を足した一般的なコストは 2,053ドル(約30.6万円)となり、史上初めて2,000 ドルを超えた。賃金の伸びが追いつかず、平均年収の値7万1,214ドルに占める住宅に関わるコストの割合は34.6%へと上昇。2007年以来の高水準となった。
一部では、機関投資家が住宅危機を悪化させているといった声も上がっている。
ドレクセル大学の研究者らは世界経済フォーラムに寄稿した論説「アメリカの壊れた住宅市場をいかに修復するか」で、調査対象とした代表的な中規模都市では、投資家の参入によって「購入プロセスが困難になり、初めての住宅購入者や1世代目の住宅所有者が市場から締め出されている」と指摘している。