米司法当局は10日、原子力潜水艦の設計に関する情報を外国に売り渡そうとした海軍省のエンジニアとその妻を逮捕、起訴したと発表した。
逮捕にいたるまで、一年近くにおよぶおとり捜査が行われた。
起訴されたのはメリーランド州在住のジョナサン・トビー(42)被告と妻ダイアナ氏(45)。トビー被告は、海軍省の原子力技師で、海軍原子力推進計画の任務に就いていた。国防総省を通じてセキュリティクリアランスを得ており、原子力法の定める「制限データ」にアクセスをすることができた。業務で、原子力潜水艦の原子炉のデザイン要素、運転パラメーター、性能特性に関するものなど、原子力推進計画に関わる情報を扱っていた。
裁判所に提出された資料によると、トビー被告が行動を始めたのは昨年4月。海軍の資料の入った小包を外国政府宛に送った。この中には、運転マニュアルやパフォーマンスレポート、その他の機密情報を売りたい意向が書かれた手紙が添えられ、「貧弱な翻訳で申し訳ないが、この手紙を軍情報機関に転送してください。この情報があなたの国家にとって大きな価値があると信じている。いたずらではありません」と記されていたという。手紙には、今後の秘密の関係を結ぶための方法も書かれていた。
FBIは12月、海外の駐在員事務所を通じてこの小包を入手したという。入手経路については明らかにしていない。
その後FBIは、外国の代表を装ってトビー被告に接近。数カ月間にわたるメールのやり取りの末、多額の仮想通貨と引き換えに、トビー被告からデータを受け取ることになった。
捜査官は6月8日、手付金として1万ドルを仮想通貨で支払った。この数週間後、トビー被告は妻とともに、指定されたウエストバージニア州の引渡場所にやってきた。妻が見張りを務め、トビー被告は、メモリーカードの入ったピーナッツバターサンドイッチを置いて去った。
捜査官はメモリーカードを回収。追加で2万ドルの仮想通貨を送ると、トビー被告からカードの解読キーが送られた。
データには、原子力潜水艦の原子炉に関する「制限データ」が含まれていることが確認された。
トビー被告は8月28日にも、再びメモリーカードの引き渡しを行った。今回はバージニア州東部で、カードはチューインガムの箱に隠されていた。捜査官が7万ドルを送金すると、前回同様に解読キーが送られ、制限データが含まれていることが確認された。
逮捕されたのは10月9日。妻とともに、ウエストバージニア州の約束の場所にカードを置いた後、あえなく御用となった。
検察は、トビー被告は、核兵器または核物質に関する情報の開示を制限する原子力法に違反したと主張している。
2人は、10月12日にウエストバージニア州の連邦地方裁判所に出廷する予定だという。