ニューヨーク市は、ホームレス支援プログラムを巡って、ニュージャージー州ニューアーク市が提訴したことを受け、同市にホームレスの人々を転居させることを一時的に停止することに合意した。NY1が報じた。
ニューヨーク市は、シェルターを利用する個人や家族に対し、市が一年分の家賃を負担し、市内または州内外に移住させるプログラム「Special One-Time Assistance Program(SOTA)」を2017年から実施している。
先月ニューヨークポスト紙は、これまで5,074家族、12,482人が、全米373都市、ハワイを含む32州とプエルトリコに移り住んだと報じた。受け入れ先の自治体は知らされておらず、報道後、ハワイ州議会議員がウィリアム・バー司法長官に適法性を巡る調査を求めるなど、ニューヨーク市の対策を問題視する声が上がっていた。
また、2月からプログラムの調査を実施していたニューヨーク市調査局は先週、ニュージャージー州で、室温基準を満たしていない物件や、暖房がなく害虫のはびこる物件が利用されていたと報告。報告書で「SOTAプログラムはニューヨークの家族をホームレスのサイクルから断ち切ること支援し、安定した、アフォーダブルハウジングを実現する道筋をつけるもの」と述べつつ、調査によって「プログラムの約束は果たされていないことが判明した」と主張。さらに「市から前払いで多額の家賃を収集した悪徳家主が、責任追及のリスクを負わずに基準以下のコンディションを提供している」と述べ、プログラムの監督体制や手続きなど、構造的な問題を指摘していた。
ニューヨークポスト紙によると、これまでSOTAを通じてニューアーク市に転居したのは1,198家族。同市では先月、家を貸す前に住宅当局による検査を義務付けるほか、家主が一ヶ月分以上のパブリックバウチャーを受け取ることを禁止する条例を成立させ、一年分の家賃を前払いするSOTAプログラムを、実質的に禁止する措置を講じている。また先週、プログラムの停止を求めて連邦裁判所に提出した訴状では、ニューヨークが弱者に対し、基準以下の状態の家を受け入れ、移転するよう圧力をかけていると主張。さらに一年分の家賃前払いは、家主によるSOTA利用者の苦情に対処する意欲を失わせていると、問題を指摘していた。
これに対し、ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長はNY1の番組で「これらは、我々が路上やシェルターから出て、より良い生活を送るよう支援している人々なのだ」と述べ、「これは単なるニューヨーク市の問題ではなく、ニューヨークの問題でもない。我々が協力して取り組まなければならない地域の問題であり、アメリカの問題だ」と、協力を求めていた。