レンタルサイトのZumperは24日、7月のニューヨーク市の1ベッドルームの家賃の中央値が、2014年の調査開始以来初めて、サンフランシスコを上回ったと発表した。
100万件を超える入居者募集中の物件を元に算出したところ、ニューヨークの1ベッドルームの家賃の中央値は2,810ドル(約30.8万円)で、サンフランシスコは2,800ドル(約30.7万円)だった。なお、パンデミックが始まった昨年3月の時点では、サンフランシスコがニューヨークを4%上回っていた。
パンデミックをきっかけに、都市部では人口が流出。ニューヨークでは、アッパーイーストサイドやウエストヴィレッジ、ソーホーなど主に高所得エリアの住民が転出し、賃貸物件の空室数は過去14年で最多となった。
それに伴い、家賃も大幅に下落。Zumperによると、2021年1月までに、サンフランシスコの1ベッドルームの家賃の中央値は2020年3月と比較して23.4%下落、ニューヨークも17.5%下落した。
勤務形態の違いが影響か
年明けから本格的に始まったワクチンの配布や経済再開に伴い、ニューヨークでは人が戻り始め、家賃は19.6%上昇。パンデミック前の水準へと戻った。
非営利団体「パートナーシップ・フォー・ニューヨークシティ」が6月に発表した調査によると、マンハッタンでは金融業を中心に、60%以上の従業員が9月までにオフィスに復帰する予定だという。
一方、テック系の企業の従業員が多数を占めるサンフランシスコでは、リモートワークを継続している従業員が多く、家賃の上昇率は4.5%にとどまっている。勤務形態が違いが、家賃の上昇率に影響を与えているようだ。
支援金配布が緊急の課題
家賃が急上昇する中、「立ち退き」を迫られる家庭への対応が喫緊の課題となっている。パンデミック初期にコロナの震源地となったニューヨーク市では、家賃を長期間滞納している家庭も多い。
ニューヨークタイムズによると、南カリフォルニア大学の研究グループ「National Equity Atlas」の分析では、ニューヨーク州の83万世帯以上(大半はニューヨーク市)が家賃を滞納しており、推定される滞納金の総額は32億ドル(約3500万円)を超える。約半数の世帯の借主は失業中で、4分の3以上は年収5万ドル(約550万円)未満だという。
ニューヨーク州に割り当てられた連邦政府の緊急賃貸支援プログラムの給付金は27億ドルだが、手続きの遅延から、これまでに支払われた金額は2億ドルにとどまっている。
ニューヨーク州の立ち退きの一時停止措置は、8月末で期限を迎える。セクハラで辞任したクオモ氏に代わり、新たに知事に就任したキャシー・ホークル(Kathy Hochul)氏は24日、立ち退きを防止するため、給付金の早期配布に取り組むと約束している。