ブルックリンのウィリアムズバーグ地区におけるはしかの感染拡大を受け、ニューヨーク市保健精神衛生局は9日、公衆衛生上の非常事態を宣言し、特定地区(郵便番号:11205、11206、11221、11249)の住人に対しワクチンの接種を命じた。
対象地区で、ワクチン接種歴のない人物は48時間以内に接種しなければならない。局員が、感染患者と接触した可能性のある住人のワクチン歴を確認するといい、ワクチンを受けていない人物または、免疫の証拠がない人物には、1,000ドルの罰金が科される。
ビル・デブラシオ市長は会見で、「ワクチンが安全かつ効果があり、命を救うことに疑問の余地はない」と述べ「影響を受けている地区の住人すべてに、子供や家族、コミュニティーを守るためにMMRワクチンを接種することを要請する」と語った。
市長によると、はしかが発生した昨年10月以降、現在までに285件の症例が確認されている。患者の大半は18歳以下の子供(246件)であり、患者の多くは、ワクチンの未接種または予防接種が不完全だったという。
感染拡大による影響を受けているのは、ハシディズム(Hasidim)など敬虔なユダヤ教徒の人口が集中するエリア。CNBCによるとコミュニティーの一部には子供への予防接種を拒否する人々がいる。はしかの発生を受け、ニューヨーク市は昨年、一部のユダヤ教学校とチャイルドケアセンターに対し、予防接種を受けていない生徒の登校を禁止ずるよう命じていた。命令に従わず、ワクチン未接種を生徒の登校を許可していた学校では、40以上の症例につながったケースもあるという。
ワクチン反対派による誤情報が拡散
保健精神衛生局のOxiris Barbot委員長は、集団発生が「少数のワクチン反対派によって促進されている」とし、これらが「似非科学を元に、危険な誤った情報を流布している」と語った。
ニューヨークタイムズは、国内のワクチン反対派が支持する団体「ピーチ」(Peach)が発行するハンドブックやチラシ、テキストメールが誤情報拡散の背景にあるとし、これらが、ワクチン接種の拒否に影響を与えたと報じている。
シェアされているテキストメールの中で、PeachのMoishe Kahan編集長は「ワクチンにはサルやネズミ、ブタのDNAやウシ血清が含まれており、コーシャー食事法では消費が禁じられている。」と述べている。
またハシディズムのコミュニティ内では、インターネット利用や科学的な研究へのアクセスが制限されるといい、これらのメッセージが草の根の活動家らを通じて広まったという。
ワクチンは動物細胞の培養液から作られるが、最終的な製品は、高度精製されているという。最も著名な正統派ユダヤ教徒ラビは、戒律を順守するユダヤ教徒に対し、ワクチンの接種を推奨している。
はしかは現在、同地区のほか、正統派ユダヤ教徒の大きなコミュニティがあるニューヨーク州ロックランド郡でも大流行し、先月26日には非常事態宣言が出された。
3人の息子がはしかに感染したというハシディズムの母親は、「ワクチンによって乳幼児突然死症候群(SIDE)が引き起こされると聞いたため、ワクチン接種をさせなかった。」とタイムズに語った。研究結果では、ワクチン接種はIDEを引き起こさないことが、明らかにされているという。
昨年末から現在にかけて、国内では465のはしか症例が確認されており、米疾病予防管理センターによると、米国ではしかの撲滅が宣言された2000年以来、2番目に高い数字を記録しているという。