NY州保健局 嗜好用マリファナ合法化を支持 「公衆衛生と社会正義に利益」

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ニューヨーク州保健局は13日、「ASSESSMENT OF THE POTENTIAL IMPACT OF REGULATED MARIJUANA IN NEW YORK STATE」と題する75ページにおよぶレポートを公表した。

レポートは、今年1月にアンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)州知事の指示によりスタートした調査をまとめたもので、専門家や調査論文、他州のデータをもとに、嗜好用マリファナを合法化した場合に想定される影響が報告されている。州保健局はレポート内でマリファナ合法化を「合法化するかどうかの問題というようりも、どのように責任をもって実行するか」と、合法化を支持する姿勢を明らかにし、「州がマリファナ市場を管理規制することによる効果は、潜在的なマイナスの影響を上回る」と結論づけている。

公衆衛生・健康への影響

レポートでは、州が大麻市場を規制することで、品質管理と消費者保護などの改善が期待されるとしている。規制のない市場では、マリファナにカビや細菌、バクテリアや重金などの有害物質が混入する可能性が高く、製品ラベルや検査の義務化といった基準を設けることで消費者への被害を減少することができる。

また、近年社会問題化しているオピオイド鎮痛剤による中毒や処方機会の減少にもつながると指摘。ニューヨークでは、オピオイドを含むオーバードーズによる死亡が2010年から2016年に180%上昇している。マリファナは鎮痛効果があり、これまでのデータにより、依存症の機会減少、オピオイド系鎮痛剤に比べて致命的な過剰摂取の危険を取り除くことが期待できるとしている。

さらに、健康面では、マリファナは痛み、てんかん、吐き気やその他の治療に有効で、アルコールやタバコ、違法薬物が引き起こす健康被害に比べ、マイナス面は少ないとしている。一方、大麻の摂取は学習や記憶、注意といった認知領域の低下との関係が見られるほか、妊娠期間中の大麻の使用による新生児の体重低下の危険性を報告している。

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マイナス面として、レポートではマリファナ使用の精神病に対する影響に触れており、精神障害、躁鬱病や重度のうつ病など、重度の精神病患者が高い割合でマリファナを使用していることや、継続的な使用がより悪い症状につながるといったリスクについて報告している。さらに、マリファナを継続的に摂取している成人は精神病の発症リスクが高まることや、精神病に罹患しやすい個人の場合、マリファナの定期的な使用が、精神病の発症年齢の低下を招く、といった悪影響について指摘している。

平等・社会正義

ニューヨークでは、マリファナ所持による有色人種の逮捕者数が、白人の逮捕者数に比べて不当に高く、社会平等の観点から問題視する声も多い。レポートでは、白人と黒人のマリファナ使用率が同等程度でありながらも、黒人の逮捕割合が、白人に比べて4倍近いことを報告。2017年のマリファナ所持による第5級犯罪の逮捕者割合は、48%が黒人、38%がヒスパニック、白人はわずか9%にとどまるという。また、これらの逮捕歴が、就職や政府の住宅制度の適用資格などに不利に働くことから、個人と家族にとって生涯にわたり悪影響をおよぼしていると述べられている。

経済効果

マリファナ合法化により、警察の時間コスト、裁判コスト、刑務所や事務処理経費など、行政コストの長期的削減効果に加え、多大な税収が期待できる。レポートでは、ニューヨーク在住のマリファナ使用者数は127万人で、ツーリストの推定購入者数2万人と合わせ、129万人を想定。現在の取引価格を参考に、1オンスあたりの価格を270ドル〜340ドルとした場合、17億ドル〜35億ドルのマーケット規模になり、1億7330万ドル〜5億4230万ドルの税収増が考えられるという。

アンドリュー・クオモ州知事からはレポートに関する正式な声明は発表されていない。今年の州知事選予備選に出馬を表明しているシンシア・ニクソン氏が、嗜好用マリファナ合法化の支持を明確に打ち出しており、予備選の争点の一つとなることが予想される。今回の調査を指示するなど、合法化に柔軟な態度を示すものの、長く合法化に反対の姿勢を表明してきたクオモ知事がどのような議論を進めるか、注目が集まる。

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Mashup Reporter 編集部
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