15日、炎に包まれるパリのノートルダム寺院の様子を世界中が見守る中、インターネットでは放火説など、火災の原因を巡る様々な陰謀説が拡散された。
火災について、パリ市長室は放火やテロの可能性を否定し、改修工事に関連する事故として調査を進めていることを発表している。
陰謀論者として知られるアレックス・ジョーンズ氏が運営するオルト・ライトメディア、InfoWarsでは、タイム誌やフォックスニュースの寄稿者のクリストファー・ヘイル(Christopher J. Hale)氏のツイートを引用して、火災を意図的に仕組まれたものだとする記事を掲載した。
ヘイル氏は15日、「ノートルダムで働くパリのイエズス会の友人が、寺院のスタッフが火災は意図的に仕組まれたものと話していると私に教えてくれた」とツイートしていた。ヘイル氏はすぐに、話には証拠がないことをツイートし、数分後にはオリジナルのツイートを消去したとDaily Beastに語っている。しかし、ツイートは短時間で広まり、複数の右翼メディアや活動家らによって、放火説を裏付ける発言として利用された。
ピザゲートを広めたことで知られるジャック・ポソビエック氏(Jack Posobiec)も、ヘイル氏の主張を45万人のツイッターフォロワーに向けて発信した。また極右の活動家、パメラ・ゲラー(Pamela Geller)も自身のブログ記事「Notre Dame Cathedral Inferno」でヘイル氏のツイートのスクリーンショットを紹介。記事はSNSを通じて広く拡散され、ツイッターでは数百回リツイートされているという。
陰謀説の声はメインメディアにも及んだ。シェパード・スミス(Shepard Smith)氏のFOXニュースの番組で、電話インタビューに応じたフランスのメディアアナリスト、フィリッペ・カーセンティ(Philippe Karsenty)氏は、インタビューの途中、火災を「フランスの9.11」と呼び、ポリティカルコレクトネスによって、火災は事故として処理されるなどと語った。シェパード氏はインタビューを中断し、「電話の男性は、私と同様に火災の原因について、いかなる種類の情報も持っていません」と視聴者に語った。
reddit(レディット)でも様々な陰謀説が飛び交っている。約85万人のメンバーがいる陰謀論に関するサブレディットでは、火災を少数派のグループによる放火などとするデマがシェアされた。さらにメンバーらの投稿では、2016年のテレクグラフの記事「Gas tanks and Arabic documents found in unmarked car by Paris’ Notre-Dame cathedral spark terror fears(パリノートルダム寺院近くで、ナンバーなしの車からガスタンクとアラビア語の資料が見つかり、テロの恐怖を喚起)」が多くシェアされているという。(テレグラフは同記事をアップデートし、今回の火災と記事が無関係であることを明記している。)
ツイッターでは、大手メディアを装ったアカウントが誤情報を流布するケースも見られた。
CNNは、同局に似せたフェイクツイッターアカウントが、火災をテロによるものとする誤情報を流していると非難。この数時間後に、アカウントは閉鎖されたという。