ニューヨーク市のビル・デブラシオ(Bill de Blasio)市長は30日、行政命令で市有地におけるアルコール飲料の広告を禁止すると発表した。
広告が禁止される場所は、バス待合所やニューススタンド(売店)、電話ボックス、Wi-FiキオスクのLinkNYCなどが含まれる。
レストランや野球場などのスタジアム、コンサートホールなどアルコール飲料を販売する会場は例外とされる。
禁止命令は直ちに実行される。声明によると、現在契約中の広告は、期間満了まで掲示されるが、新たな契約の締結及び更新に関して、アルコール飲料の広告は受け付けない。
市長は「健康上の平等を約束」
市の発表では、2016年に緊急治療室を訪れた人は11万人で、アルコール飲料に関連した死亡者数は約2,000人に上る。
2017年の調査では、イーストハーレムでのアルコール関連の入院率が最も高く、アッパーイーストサイドの5倍となっている。
デブラシオ市長は声明で「多くの市民が、薬物乱用の問題で苦しんでおり、その中の一つはアルコール飲料の過剰摂取だ。」と述べた。
市保健局の調査によると、屋外広告の露出は、アルコール飲料の多量摂取を引き起こすことが分かり、相関性があるとしている。
市長は「広告の禁止命令は、健康上の平等を約束し、全市民の幸福を守ることを再確認することだ。」と語った。
保健局長代理のヒラリー・クニンズ(Hillary Kunins)博士は「科学的研究の結果、広告は有色人種をターゲットにしていることが裏付けられており、黒人やラテン系アメリカ人の若者を早期からの飲酒リスクにさらしている。」と述べた。
ニューヨークタイムズによると、2017年の研究結果では、比較的低所得の地域、主に黒人とヒスパニックが居住するエリアの地下鉄で、アルコールの広告が過度に行われていることが分かった。同地域は、比較的学歴が低く多くの子供を抱えるエリアと重なる。
市の広告スペースの約3%が、アルコール飲料の広告に使用されており、2018年会計年度のアルコール飲料関連の広告収入は、270万ドル(約3億円)だという。
市の職員は、広告禁止による市の損失は、過剰な消費が及ぼす影響によって正当化されると述べた。
なおニューヨーク市内のバスや地下鉄構内、車両内におけるアルコール飲料の広告は、2018年1月より禁止されている。
業界団体は反論
一方、ワシントンを拠点に活動する業界団体、米蒸留酒協議会(Distilled Spirits Council)は市の命令に異議を唱えた。
同団体のジェイ・ヒバード(Jay Hibbard)副会長は、「21歳以下の早期飲酒の最大要因は両親や大人にある」と主張。テキサス大学が2015年に行った調査結果に言及し、「広告はアルコールの消費に、ほとんど影響を及ぼさず、ブランドの選択により影響を与えている。」と市の見解に反論を述べた。