ウクライナ紛争をめぐってバイデン政権が今後、ロシアの制裁対象者リストを拡大する可能性を見越して、ロシア人富豪の間で、マンハッタンの高級物件を密かに売却しようとする動きが加速しているという。
ニューヨーク市で高級物件を中心に扱う老舗不動産業者は、FOXビジネスの取材に、ロシア人顧客から先週だけで、「ウィスパーリスティング」の相談が50~70物件あったと答えた。
ウィスパーリスティングは、オーナーから依頼を受けた不動産業者が、物件の売り情報を市場に出さず、コネのある客に個人的に連絡、販売する行為だという。
連絡のあった物件は、通称「ビリオネア通り」にある高級タワーマンションの物件が多いほか、ウエストビレッジやパークアベニュー、五番街の物件もあるという。
セントラルパーク南方の57番ストリート周辺は、近年、高層の高級マンションが多く建ち並び、一帯はビリオネア通りと呼ばれている。ある調査によると、このあたりの物件のオーナーの居住率は50%程度で、他の地域(75%)より大幅に低い。NYポスト紙は以前、「グローバルエリートのための貯金箱」と皮肉っている。固定資産税が平均値に比べて著しく低いとされ、税制の抜け穴を利用してるとの批判がある。
前出の不動産業者によると、物件の希望価格は500万ドル(5億8,000万円)から4,500万(53億円)ー5,000万ドル(58億円)だが、制裁次第で変わるだろうとの見方を示している。
一方、別の不動者業者はFOXビジネスに、先週だけでセントラルパーク南方にある61物件が売りに出されるか、価格に変更が加えられたと明かした。公園の南東部に隣接する有名な「ザ・プラザ」では、ロシアの侵攻開始以来、少なくとも16物件に動きがあったという。価格は100万ドルから2,800万ドル程度だという。
マンハッタンの高級物件は長らく海外からの投資対象となっており、1980年代は日本人が多く買い求め、当時は日銀もミュージアムタワー付近の物件を購入したという。ロシアの富裕層の購入が増えたのは過去10~15年ほどで、ビリオネア通りの新築タワーマンションや、周辺の高級物件が多く売れたという。最近はロシア人客が減少し、中国や台湾、香港の富裕層が多いという。
これとは別に、ニューヨークポスト紙は、ロシア最大のプライベートバンク「アルファ銀行」のオーナーで、制裁対象とされたアレクセイ・クズミチェフ氏(59)が、2016年に4,200万ドルで購入したマンハッタンにある物件を4,100万ドルを売りに出したと伝えている。
同紙はまた、モスクワのドモジェドヴォ空港のオーナー、ヴァレリ・コーガンとオルガ夫妻がプラザの部屋を5,000万ドルで密かに売りに出しており、2人はさらにアッパーイーストサイドとアッパーウエストサイドの物件、さらにコネチカット州グリニッジの不動産を売却も考えていると報じている。