ニューヨーク市警察は13日午後、前日に地下鉄で銃乱射事件を起こしたフランク・R・ジェームズ(Frank R. James)容疑者(62)を逮捕した。
事件は12日朝、ブルックリンのサンセットパークを走行中の地下鉄の車両内で起きた。ジェームズ容疑者は、少なくとも33発の銃弾を放ち、10人が撃たれ、23人が負傷した。
キーチャント・スーウェル警察本部長は会見で、通行人から容疑者がイースト・ヴィレッジにいるとの通報を受けたと発表。さらに通報の中には、自分が容疑者だと名乗り出たものもあったと明らかにした。
WABCは、ジェームズ容疑者が警察に連絡し「君たちは、私を探しているんだろう。私は、マクドナルド周辺にいる」と自ら知らせたと伝えている。
これを受け、警察官がイースト6ストリートと1アベニューにあるマクドナルド店に到着した際、すでに姿はなかったが、通行人から、少し先にいることを知らされたという。
ジェームズ容疑者は午後1時45分ごろ、セントマークプレースと1アベニューにあるキオスクで、携帯の電源をチャージしていたところを拘束された。
「ヒーロー」誕生
ニューヨーク市警察は、決め手となった目撃情報について明らかにしていないが、路上で容疑者を目撃し、近くの警察に知らせた監視カメラの技術者の男性が、「ヒーロー」だとして注目を集めている。
警察は前日、有力な情報を提供した市民に、5万ドルを支払うと発表していた。
男性の名前は、ザック・ターハン(Zack Tahhan)さん(21)。仕事先の店内で、監視カメラを設置していたところ、スクリーンにジェームズ容疑者が写っているのを発見。近くにいた警官を呼び止めた。
ターハンさんはメディアの取材に、周囲を歩く人々に「みんな気をつけろ。彼から離れろ」と忠告したと状況を説明。通行人から、クスリでもやっているのかと怪訝な顔をされたが、自分を信じてと必死に訴え、近くの警官に「彼を捕まえろ!捕まえろ!」と声をかけたと語った。
ターハンさんは5年前、シリアから米国に移住し、現在ニュージャージー州で暮らしている。インタビューに「われわれは、いつもみんなを安全にしたいと思っている。人生は素晴らしいからだ」と語った。
警察車両で移動するターハンさんに、周囲からは「君がヒーローだ」と賞賛する声が飛んだ。ネットではターハンさんの動画が拡散され、#ThankYouZackがツイッターでトレンド入りした。警察が提示した報奨金の5万ドルを、彼に与えるべきだとの声も上がっている。
なお、警察に知らせたのは、ターハンさんだけでない。NBCニューヨークは、家族と昼食を取っていたリー・ヴァス(Lee Vasu)さんが、警官に知らせた話を紹介している。
ヴァスさんは同局に、「彼は、何かをつぶやいており、正気ではないようだった。FBIを罵り、自問自答していた」とその時の様子を語っている。
ターハンに仕事を依頼したハードウェア&ガーデン店のマネージャー、フランシスコ・ブブエラ(Francisco Puebla)さんはニューヨークタイムズに、容疑者を発見し「最初に行動を起こしたのは自分だ」と主張している。最初は「誰もトラブルに巻き込みたくない」と考え、通報するのを躊躇していたが、警察車両が停車した際、車に歩み寄って「誤りかもしれないが、銃撃事件の男が、この通りの真ん中にいる」と伝えたと述べている。
事件もさることながら、報奨金の行方も気になるところだ。