ニューヨーク市ハーレムの路上で、警察官が女性を張り倒す動画がインスタグラムに投稿され、物議を醸している。
投稿された動画では、複数の警官が男を取り押さえようとしているところに、女性が駆け寄り、男と話す様子が撮影されている。女性は、1人の警官と押し合いとなった後、顔面を殴られ、勢いよく地面に倒れた。周囲から「なぜそんなことをする」など警官に対する非難の声が飛ぶなか、女性は警官らに起こされ、手錠をかけられた。
ニューヨークポスト紙によると、女性の名は、タマニ・クラム(Tamani Crum)(19)。警官への暴行や逮捕時の抵抗、公務執行妨害などの罪で起訴された。
警官が拘束しようとしていた男の名は、エルヴィン・ジェームズ(Elvin James)(22)で、今月12日にウエスト163ストリート付近で起きた発砲事件に関して、捜査対象となっていた。
拘束時、弾の入ったゴースト銃や規制薬物を所持していた。ヘイトクライムとしての殺人未遂罪や武器の所持罪などで起訴されたと伝えられている。
ニューヨーク市警察は、事件について「警官が逮捕する間、その場にいた複数人が警官らに、身体的な攻撃をしかけて妨害した」と状況を説明。1人の警官が、頭部に軽傷を負ったとしている。
クラム被告のほかに、1人の女性が同様の罪で起訴され、もう1人の女性が、警官に唾を吐いたとして、裁判所への出頭を命じられた。
動画のコメント欄には、警官の行為について「過度の権力行使だ」「卑怯」「われわれに対する戦争だ」など非難の声が多数投稿されている。
事件の翌日には、ハーレムにあるナショナル・アクション・ネットワーク(NAC)で、被告の母親らが抗議活動を行った。
地元テレビ局Pix11によると、クラム被告は、殴られた日の夜に入院したが、翌日には拘置所に移送されたという。代理人は、警官は「理不尽かつ不当な反応を示した」と主張。別の手段を取っていれば、今回のような状況は回避できたはずだと批判した。ボディカメラの映像を確認した上で、民事訴訟を提起するかどうかを判断するとしている。
一方、警察組合は、警官の対応を擁護。ポール・ディジャコモ委員長は「ニューヨークの犯罪者は、危険で違法な行為が罪に問われないことが当たり前になってきている。しかし、銃武装した男の逮捕を妨害しようと、警官を攻撃するならば、影響が及ぶ」と女性の非を指摘した。