米有力紙ニューヨークタイムズの論説委員は26日、「ドナルド・トランプは法を超越しない」と題したオピニオンを掲載し、メリック・ガーランド司法長官は、トランプ氏の犯罪を立証するのに「十分な証拠」があれば、訴追しなければならないと訴えた。
2021年1月6日に起きた議事堂襲撃事件や、FBIによるフロリダ州パームビーチにある邸宅の強制捜索を例に挙げ、「前大統領に対する犯罪捜査は、アメリカの民主主義への深刻な問題を提起している」とし、司法省はその疑問に答えるべきだと、毅然とした対応を求めた。
トランプ氏は、2020年の大統領選で敗北したにも関わらず、司法当局や州の選挙当局者にはたらきかけ、「凄まじい努力で権力を維持しようと試み、それらが全て失敗に終わった時、武装集団に議事堂を襲撃するようかき立て、議員らを脅した」と非難。トランプ氏が1月6日の事件で起訴されなければ、「将来の大統領は、平和的な政権移譲に抵抗しようとするだろう」と警鐘を鳴らした。
過去に刑事訴追された大統領はいない。タイムズは、トランプ氏が起訴された場合、その支持は「より強固」となり、陰謀論が拡散され、「市民の暴動」にさえ発展する可能性もあるだろうと指摘。さらに「法の支配における信頼が損なわれ」、党派の対立が「エスカレーションするリスクは明白」だと、世の不安定化を引き起こすと予測した。
一方で、司法省がトランプ氏の責任追及を慎重に進めたとしても「極端な行動を正当化する人々の重大なリスクは実在する」と述べ、「行動が求められる時に、何もしないのは、より大きなリスクを招く」と主張。さらに、トランプ氏が罪を免れれば、「抗い難い前例」となり、大統領が「望むことは何でもできる権利を与えることになる」と警告した。
論説委員は、トランプ氏の行為は「世界で最も古い民主主義国家の恥であり、将来を不安定化させた」と批判。トランプ氏を訴追したとしても、「南北戦争以来、米国最大の危機を招いた構造的な問題」を解決することはできないだろうとしつつも、「不可欠な最初の第一歩である」と締めくくった。