16日、全米トップクラスの私立大学、ニューヨーク大学(The New York University School,NYU)医学部は、在校生と今後入学する学生を対象に、授業料を全額免除を行うと発表した。
学費免除は、経済状態に応じて適用するニーズベースや、学力などの能力に応じて適用するメリットベースに関係なく、全学生を対象に即日実施する。
現在のNYU医学部の年間の学費は、55,018ドル(約600万円)で、平均27,000ドル(約300万円)とされる教材や寮費などの生活費は免除の中に含まれない。
Princeton Reviewによると、NYU医学部の合格率は6%で狭き門だ。学費免除の発表は、医学部での教育を開始するホワイトコートセレモニー(白衣授与式)の最後に発表され、多くの学生や家族を驚かせた。
学費全額免除の背景には
高等教育の授業料の高騰に伴い、大学卒業後、膨大な借金を背負う若者が増加する深刻な社会問題が存在する。
NYUの発表によると、2017年の医学部卒業生のうち62%はローンを抱えており、平均金額は184,000ドル(約2,000万円)にのぼるという。
ランゴンヘルス医学部理事長のロバート・グロスマン(Robert I. Grossman)氏は「医師を志す若い人たちの、膨張する借金の負担を軽減することは、道徳的使命だ。」と述べた。
また、莫大な学生ローンは、医学生がプライマリケアや小児科、産科、婦人科など収益性の低い分野を避け、高額収入が見込める専門分野を選択したり、学生が医学部そのものを専攻しない可能性についても指摘している。
NYUは、計画に必要とされる資金6億ドル(約660億円)と試算しており、そのうち4.5億ドル(5億円)以上を調達済みだと発表している。
医学部の名称でもある、ホーム・デポ(Home Depot)の創始者ケネス・ランゴーン(Kenneth G. Langone)氏と妻のエレイン(Elaine)さんが1億ドルを寄付している。
ニューヨークタイムズによると、UCLAの医学部(David Geffen School of Medicine)では数年前から、メリットベースによる全額免除の奨学金(生活費など全てを含む)を20%の学生に対して提供している。
年間授業料が59,364ドル(約650万円)とされるコロンビア大学医学部では、昨年12月に、製薬会社メルク・アンド・カンパニー(Merck & Co.)前会長で同学部卒業生のロイ・バジェロス博士(P. Roy Vagelos)博士と妻ダイアナさんが、2億5,000万ドル(約275億円)を寄付し、学生に対して学費全額免除の奨学金を不要すると発表している。
米国の医学部に入学する生徒約2万人のうち、ほとんどが連邦政府による資金援助を受けているという。
2017年に米医科大学協会(Association of American Medical Colleges)が行った発表によると、卒業する医学生の債務の中央値は192,000ドル(約2,100万円)となる。
医学部に通うために必要な年間の費用(生活費を含む)の中央値は、公立大で60,945ドル(約670万円)、私立大で82,278ドル(約900万円)とされている。