トランプ氏に巨額の支払命令が下ったことを受け、アメリカ版マネーの虎「Shark Tank」の出演で知られる投資家、実業家のケヴィン・オレアリー氏は「ニューヨークに投資することは絶対にない」と宣言した。
19日、FOXビジネスのインタビューに出演したオレアリー氏は、「判決はまったく理解ができない。合理性がない」と主張。「ニューヨークはすでにルーザー州だ」と述べた。高い税率に非競争的な規制といった政策を非難しつつ「すでに敗者州のトップにいる。現時点で、ニューヨークに投資することは絶対にない。そう言っているのは私だけではない」と宣言した。
トランプ氏や一族企業が有利な融資条件を得るために、金融機関に資産価値を偽っていた問題で、ニューヨーク郡裁判所のアーサー・エンゴロン判事は16日、トランプ氏らに約3.55億ドル(530億円)の支払いを命じる判決を下した。支払いに加えて、トランプ氏と息子2人に数年間経営に携わることを禁じ、ニューヨーク州に登録する金融機関に融資を求めることを3年間禁止するとした。
オレアリー氏は、トランプ氏の問題には被害者がいないと指摘。「誰が被害者で、誰が金を失ったのだ。恣意的な判決だ」と述べ、「ニューヨークはこの法規則について何と言っているのだ。3.5億ドルは制裁金なのか?おまけに9%の利息で、被害者がいない。すまないが、彼女(ニューヨーク州知事)の言葉に聞く耳を持つものなどいない。彼女が正当化するために言えることなどない」と声を荒げた。
ニューヨーク州のホークル知事は判決について、トランプ氏のケースは「異例」であり、「法を遵守してルールに従っているビジネスマンのニューヨーカーは、何ら心配することはない」と語っていた。
専門家の一部からは、判決が悪しき前例になる可能性を懸念する声が上がっている。
AP通信によると、問題に関わった銀行は、トランプ氏が個人的に保証することに同意したことを理由に低金利で融資をしており、証言を行った銀行関係者は、資産価値が水増された報告が金利に何らかの影響を与えたのか明確に述べなかった。
ミシガン州立大学の法学教授、ウィリアム・トーマス氏はAPに対して「誰が苦しんだのか?大勢の被害者のリストがない」と疑問を呈した。
ニューヨーク州司法長官が提訴の土台としたニューヨークの行政法第63条(12)として知られる詐欺防止法は、原告側は「繰り返された詐欺行為または違法行為」の証明のみを必要とし、詐欺をする意図、または騙されたり金銭を失ったりした被害者の存在を必要としない。
ロイターによると、同法はこれまで、消費者や投資家、零細企業を詐欺などの略奪的慣習から保護するために使用されている。被告とされてきたのは鶏肉業者から仮想通貨取引所、貸金業など多岐にわたるが、金融知識の乏しさを企業に悪用され、多額の損失を被った被害者が大勢いるのが一般的だという。
トランプ氏は上訴する計画を示しており、控訴審では「被害者なし」の主張が、一つの鍵を握ると見られている。