アカデミー賞授賞式でプレゼンテーターに選ばれた俳優が、中国政府を支持しているとして、主催団体に登壇中止を求める声が上がっている。
「イップ・マン」や、スター・ウォーズのスピンオフ映画「ローグ・ワン」、「ムーラン」などの出演作で知られるベテラン俳優ドニー・イェン(Donnie Yen)(59)は今週末、ロサンゼルスで行われる第95回アカデミー賞授賞式にプレゼンテーターとして出席する。
Change.orgでは、イェンの出演中止を求めるキャンペーンが立ち上がっており、85,000人以上の賛同が寄せられている。
キャンペーンの主催団体は、イェンがこれまでに、香港国家安全維持法を支持し、抗議者を暴徒と非難するなど、中国共産党を支持してきたと指摘。「言論の自由の精神を侵害し、自由と民主主義のために戦う香港の人々の権利を否定した」と批判した。アカデミーの決定は「映画業界のイメージと評判を損ない、人権と道徳的価値観に深刻な害を及ぼす」と述べ、登壇の中止を求めた。
イェンは1963年、中国の広州で生まれ、香港で育った。11歳で米国に移住し、帰化。しかし2009年に香港の国籍を再び取得。その後、米国籍を放棄している。
イェンは先月公開されたGQのインタビューで、中国の近代化に関して、世界の国々を見てきたが、高速道路や建築、生活の利便さなどについて「全く別物」と称賛。CNNやBBCなどの欧米メディアを名指ししつつ「彼らは、決してそのことに触れない。真の側面について言及しない」と語っていた。また2019年の香港の民主化デモに関して、政治的に巻き込まれたくないとしつつも、自身はその場にいて「自らの体験」を踏まえ、「抗議ではなく、暴動だった」と振り返った。
イェンは「幼い頃から中国人の血が流れていると知っていた。私は帰属感を必要としている。今は100%中国人だ」などと語っていたこともあるという。
Nextsharkによると、今年1月、国政助言機関である中国人民政治協商会議(CPPCC)の新メンバーに就任した。3月に北京で開催されたCPPCCの会合では、中国のアクション映画制作に対する投資を呼びかけたという。CPPCCのメンバーと噂されるジャッキー・チェンと、公的資金投入による地方映画館の再生を呼びかけたこともある。
なおアクション俳優として40年以上のキャリアを持つイェンは、5月に米国で公開される新作映画「ジョン・ウィック チャプター4」でキアヌ・リーブスと共演している。