ロシアによるウクライナ侵攻から3か月となる中、プーチン大統領は苦境に立たされている。
ウクライナへの侵攻を開始した当初、プーチン大統領は自信に満ち溢れていたはずだ。プーチン氏は2000年に大統領に就任してから、1999年以降のチェチェン紛争や2008年の南オセチア紛争、2014年のウクライナ危機とクリミア併合と度重なる軍事紛争で勝利し続け、今回のウクライナ侵攻でもロシア軍の圧倒的な力を見せつけると思っていたはずだ。
しかし、いざ蓋を開ければ、そこにあったのは欧米からの軍事支援や数万人規模の外国人義勇兵の協力を糧に、下馬評を覆すウクライナ軍の姿だった。プーチン大統領は数日もあれば首都キーウを掌握できると思っていたが、それどころかキーウ周辺からの撤退や東部での停滞を余儀なくされ、ゼレンスキー政権の崩壊や親ロ政権の樹立は遠い夢となっている。また、戦闘の最前線に立つロシア軍兵士たちの士気も大幅に低下し、上層部からの指揮命令系統も十分に機能しておらず、プーチン大統領と側近たちの間にも確執が生じているとみられる。
一方、ロシアのウクライナ侵攻によって、ロシアの近隣諸国は警戒を強めている。たとえば、ロシアと1300キロに渡って国境を接するフィンランドはNATO北大西洋条約機構への加盟を正式に開始する方向だ。これまでフィンランドはNATOの東方拡大を警戒するロシアにも配慮し、軍事的には中立を維持してきた。しかし、ウクライナ侵攻によって状況は一変し、NATOへの加盟を支持するフィンランド国民の声が一気に強まり、フィンランド政府はついに動き始めた。フィンランドの隣国スウェーデンも同様に軍事的中立という立場から離脱し、NATOへの加盟に舵を切っている。
長年、プーチン大統領はNATOの東方拡大に強い不信感や苛立ちを見せてきた。今回のウクライナ侵攻の背景には、それに対抗する意味も含まれていたはずだが、むしろNATOの東方拡大を助長してしまった。これもプーチン大統領にとっては大きな誤算だろう。
核兵器使用の懸念
ウクライナ侵攻が長引くにつれ、プーチン大統領の立場はいっそう厳しくなろう。ロシア軍の劣勢が顕著になり、国際政治におけるプーチン大統領への圧力はいっそう強まり、さらには欧米主導の経済制裁で世界的企業がロシアからの撤退を表明するなど、プーチン大統領は軍事、政治、経済という三重苦に直面している。今後は中国やインドなど非欧米諸国とロシアの関係が大きなポイントになろうが、劣勢に立たされるプーチン大統領が、起死回生の手段として核などのより過激な行動に出ないかが懸念される。