ロシアのプーチン大統領は15日、ソ連時代に「母親英雄」の称号を贈っていた制度を復活させ、10人以上の子どもを持つ母親に、100万ルーブル(約220万円)の一時金を支給すると発表した。
Foxニュースによると、母親英雄は1944年に始まり、ソビエト連邦が崩壊した1991年まで続いた。10番目の子どもが1歳の誕生日を迎えた時点で、すべての子どもが生存していることや、「健康、教育、身体、精神、道徳的発達のための適切なレベルの育児」を行っているなどの条件が設けられている。ニューヨークポスト紙によると、ロシア人の平均年収は75万ルーブルだという。
プーチン氏は、ウクライナ戦争について言及していないものの、ロシアの専門家は、出生率の低下に加え、ウクライナ侵攻による死傷者数の増加や、人口流出など戦争の影響を指摘している。
スラブ・東欧の研究者でロンドン大学のクリスティン・ロス・エー准教授は、ワシントンポスト紙に対し、制度は第二次世界大戦の終わりに「出産奨励主義」の一環として導入されたと説明。当時、第二次世界大戦で人口減少に対する人々の不安が高まったと述べ、現在も同様の状況にあるとの見解を示した。
元米国防情報局のロシア担当職員で「プーチンのプレイブック」(Putin’s Playbook: Russia’s Secret Plan to Defeat America)の著者レベッカ・クフラー氏はFoxニュースに、制度は「第二次世界大戦や飢餓、スターリンによる粛清で失われた人口を補うための」国家の長期的な計画だったと振り返った。
一方、現在のロシアでは「道理をわきまえた若い女性」が10人の子どもを育てるのは、現実的ではないと指摘。経済的観点や、子だくさんの文化がないこと、旧ソ連時代に宗教が非合法化されたことなどの理由をあげた。
なお、プーチン大統領は2007年にも、夫婦が妊娠するための「国民受胎の日」を設けるなど、少子化対策を発表している。先のクフラー氏は、ロシアの合計特殊出生率は1.824人で、人口置換水準の2.2を上回っておらず、問題は解決されていないと述べた。