未成年の時に性的暴行を受けたとする米国人女性から提訴された英国王室のアンドルー王子(61)。法的闘争にかかる費用は数百万ポンド規模に膨らむともいわれているが、それを母親のエリザベス女王(95)が肩代わりする予定だと、英紙テレグラフが伝えた。
原告のバージニア・ロバーツ・ジュフレさん(38)は8月9日、17歳だった2001年にアンドルー王子から性的暴行を受け、今も極度の感情的苦痛や心理的トラウマに苦しんでいるとして、損害賠償の支払いを求める訴訟をニューヨークの連邦裁判所に提起した。
ジュフレさんは、当時、ジェフリー・エプスタインから性的虐待を受ける一方で、権力者らと性行為を強要されたと説明。この中にアンドルー王子も含まれ、ロンドン、ニューヨーク、ヴァージン諸島のリトル・セント・ジェームズ島で性的暴行を受けたと主張している。
当初、王子側は訴状の送達方法に難色を示したが、先月、法廷に提出された資料から正式に受領したことが明らかになった。首席弁護士には、ハリウッド俳優らの案件を手がけることで知られるアンドルー・ブレトラー氏を据え、徹底抗戦する構えを示している。
さらに先週、新たにプリンストン大学とコロンビア大学出身の弁護士、メリッサ・ラーナー氏が弁護団に加わった。ラーナー氏も、ブレトラー氏と同じ、セレブのスキャンダル「もみ消し」に定評があるロサンゼルスの法律事務所「Lavley Singer」に所属しているという。ブレトラー氏が請求する金額は、時給2,000ドル(22万円)ともいわれている。ラーナー氏や英国の弁護団の人件費を含めれば、訴訟に関わる費用は莫大な金額に膨れ上がるとみられている。
エリザベス女王がアンドルー王子の訴訟費用を払うことに同意したのは、2019年のBBCのインタビューから間もなくのことだったという。ジュフレさんの性的暴行疑惑を晴らすためにインタビューに臨んだアンドルー王子だが、エプスタイン被告による性犯罪の被害者に同情を示さず、自身の疑惑について不自然な説明に終始するなどして、返って国民の不信を買う結果となった。インタビューの放送後、自ら公務を退くと発表した。
女王は、ランカスター公領の不動産から得る個人の収入を訴訟費用に充てる予定だという。
訴訟は解決までに数カ月から数年かかると見られ、王室側も数百万ポンドに及ぶことを覚悟しているという。ジュフレさんは訴状で賠償金の額を特定していないが、裁判の結果次第では、さらに数百万ポンドが上乗せされる可能性もある。
アンドルー王子 定収入なし?
アンドルー王子個人の資産については謎が多く、裕福な暮らしぶりの一方で、王子自身には定収入がないと指摘する専門家もいる。
さらに先月、スイスに「投資用」に所有していた唯一の不動産も、負債の返済のために売りに出したと伝えられた。王子は2014年、元妻セーラ・ファーガソンさんと共同名義でスイスのスキー場に約1700万ポンド(約26億円)のシャレーを購入した。費用は、ローンと、エリザベス女王の個人資産でまかなったという。
ページシックスによると、売却のきっかけは、元オーナーのイザベル・デ・ルーブル氏が、670万ポンド(約10億円)の未払いがあるとして王子を提訴したことだった。王子側は売却で得る収入によって、不足分を支払うことに同意したという。
なおセーラさんも、エプスタインと関係している。2011年、エプスタイン被告がセーラさんの元アシスタントに対する借金の一部を代わりに支払ったことが明るみに出た際、自ら「巨大な間違いだった」と認めている。またタックスヘイブンとして知られる英領バージン諸島で、アンドルー王子とオフショアファンドを共同所有する資産家、デビッド・ローランド氏も、セーラさんの借金を解決するために4万ポンド(約600万円)を支払ったと伝えられている。
パワフル弁護士
訴状の受領を認めた王子側は、10月29日までに回答をしなければならない。次回審問は11月3日に設定されている。
王子の弁護団に加わったラーナー氏がアソシエイトとして働く法律事務所「Lavley Singer」を率いる、マーティ・シンガー弁護士は、ハリウッドで「マッド・ドッグ・マーティー」の異名をとるセレブ弁護士だという。過去にジョン・トラボルタ、スカーレット・ヨハンソン、チャーリー・シーン、アーノルド・シュワルツェネッガーなどの弁護を担当したことがある。
ラーナー氏は自身をエンターテインメント業界に精通し、知的財産や医療、ホワイトカラーに関する弁護経験が豊富」と紹介している。最近では米ロックバンド「サウンドガーデン」のボーカル、クリス・コーネル氏の代理人を務めているという。