回顧録「スペア」の発売をめぐって物議を醸しているヘンリー英王子に、故レーガン元大統領の娘、パティ・デイビス氏(70)が、自伝本を出版したことのある先輩として、苦言を呈した。
デイビス氏はレーガン氏にとっての4番目の子供で、妻ナンシー氏との間に生まれた最初の子供。父親と同じく俳優の道に進み、作家としても活躍している。1992年に自伝本「Family Secrets」を出版している。
デイビス氏はニューヨークタイムズに寄せた投稿文の冒頭、父親がアルツハイマー病の初期で明晰さが残っていたある日、この数年前に執筆した自伝本の中で、問題を抱えた家族の生活を公にしたことを謝罪したと振り返った。口数が少なくなりつつあったレーガン氏だったが、娘の気持ちに、目で理解を示したという。
回顧録の中に、父チャールズ氏が争う息子たちに「頼む、息子たちよ、私の晩年を不幸にしないでくれ」と願ったエピソードが記されていると聞いて、当時を思い出したとしつつ、「今となって書かなければよかったと思うが、当時本を出版した私の正当性は、ヘンリーとよく似ている」と説明。「真実を告げ、誤解を解きたかった。私の気持ちと真実を世間に伝えれば、家族が私をもっとよく理解してくれるかもしれないと思っていた」と明かした。
一方、「出版した後になって真実が何かを学んだ。真実は、若い頃に思っていたものより複雑で、一つではなく、物語の他の登場人物にも同様に真実がある」と前置きした上で、ヘンリー王子が兄ウィリアム皇太子に突き飛ばされたエピソードに言及。「ウィリアム皇太子にも自分なりの解釈があるだろう。話を広げ、より完全なものにするには、ウィリアムの真実も考慮しなければならない」と指摘した。
デイビス氏はまた、ヘンリー王子は兄や父との関係修復を願いながら、自ら溝を深めているとしつつ、以前ある人物から、若い頃の自分に贈る言葉を聞かれた経験に言及。迷うことなく「単純よ、静かにしなさいと言うわ」と答えたとし、「ずっとでなくてもいい、もっと広いレンズで物事を見ることができるようになるまで。言葉には結果が伴い、長い間続くのだと理解するまで」と加えた。
ヘンリー王子は、兄を「宿敵」と記すなど、「傷跡を残すような言葉を選んだ」とした上で、「彼が静かに、自分の言葉に長く宿る力について考える時間をとっていたら、もっと違う言葉を選択しただろう」と予想した。「この先いつか、ヘンリーも私のように振り返って、自分が言ったことを取り消したいと思うかもしれない」と述べた。
最後に、「沈黙という選択肢はない」と主張するヘンリー王子について、「すべてを共有する必要はない」と訴え、王子に「沈黙によってわかる真実」を提案したいと締めくくった。
ヘンリー王子は、「スペア」の発売直前に放送された米CBSのインタビューで、記した内容は兄や家族を傷つけることを意図したものではないが、「私たちが成長してきた状況の全体を示す」ものだと話し、さらに、妻メーガン妃が、兄弟関係を破壊したという主張を「やり込めてもいる」と意図を語っていた。