FBIの匿名の情報提供者によると、ウクライナの天然ガス会社ブリスマの創業者、ミコラ・ズロチェフスキー氏(Mykola Zlochevsky)は、バイデン氏が副大統領だった2016年、国内の汚職捜査をかわすためにバイデン親子に1,000万ドルを支払ったことを示唆したことがあったという。2020年6月に作成されたFBIの報告文書から明らかになった。
文書は、FBI捜査官が機密情報源からの未検証の生の報告を記録するための書式(FD-1023)で、共和党のチャック・グラスリー上院議員が20日に公開した。
それによると、情報提供者は2016年にオーストリアのウィーンにあるコーヒー店でズロチェフスキー氏と面会する機会を持った。面会の時期は、バイデン氏が、当時ウクライナの検事総長だったビクトル・ショーキン氏の解任を公に支持した時期と重なっていた。
話し合いの目的は、ブリスマが当時検討していた米国のエネルギー関連企業の買収の話に関するものだった。同社は買収を通じて、米国でのIPOの可能性を探っていた。
この中で、ショーキン氏による汚職捜査がIPOに不利に働く可能性を指摘されたズロチェフスキー氏は「心配ない。ハンターが父親を通じて、これらの問題すべてを面倒見てくれる」と答えたという。ハンター氏は2014年から2019年まで同社の役員に加わっていた。
さらに、問題の解決に「一方のバイデンに500万ドルがかかって、もう一方のバイデンに500万ドルかかる」と笑って話したという。
このほか、エネルギー関連のビジネスに明るくないハンター氏以外の人物を雇い入れるべきだと助言すると、ズロチェフスキー氏は、ハンター氏は「頭が悪く、自分の犬の方が賢い」とコメントしつつも、「すべてが順調」に進むにはハンター氏を役員に置いておく必要があると説明。バイデン親子の両方からもそのような助言があったと明かした。
その後、2016年の大統領選後に交わした電話では、バイデン親子との関わりに懸念があるか尋ねると、ズロチェフスキー氏は、バイデン親子に支払いたくなかったが、支払いを迫られたと答えたという。ただし一方で、ショーキン氏が解任され捜査が中断した今となっては、バイデン家との金銭取引を発見する者はいないとも主張した。
ズロチェフスキー氏は、支払いを強要されたことを示すテキストメッセージや録音があるとしており、録音に至っては17本のうち、2本にバイデン大統領が含まれていると主張したという。
ハンター氏とブリスマの関係が取り沙汰された2019年に行った電話では、バイデン親子への送金について難しい説明を求められる可能性を指摘すると、ズロチェフスキー氏は「Big Guy」には直接送っていないとし、バイデン氏に対する不当な支払いを見つけるには、捜査に10年を要するだろうなどとも話したという。
バイデン氏は副大統領時代、ショーキン検事総長が汚職捜査に消極的であることを理由に、解任に支持を表明していた。2015年12月にウクライナを訪問した際、ポロシェンコ前大統領に対して、検事総長の解任をしなければ10億ドルの融資保証を保留にすると警告したと、自ら明かしている。
一方、トランプ氏や共和党議員の一部は、バイデン氏の働きかけはハンター氏の不正を隠そうとしたものと主張を繰り返した。そうした中、トランプ氏は2019年、ゼレンスキー大統領との電話協議の中で、軍事支援金の見返りにバイデン親子の調査を働きかけた疑惑が浮上。これが「権力乱用」にあたるとして、弾劾裁判に発展した。
今回の文書の公開を受け、ホワイトハウスのスポークスマン、イアン・サム氏は声明で「議会共和党は、真実に関係なくバイデン大統領を追及しようと躍起になっており、何年も前から否定されてきた主張を押し続けている」と反論。「これらの主張は、トランプ政権の司法省とトランプ氏が任命した連邦検察と司法省によって精査された。前大統領の完全な弾劾裁判は、まさにこの問題を中心にしたもので、信頼性にかけることが何度も確認されている」と述べ、「議会共和党は恥知らずで不誠実な政治を行うことに固執しており、真実を妨害しないことを拒否しているのは明らかだ」と非難している。