ジョージワシントン大学の研究者らは、新たな研究報告書で、マクドナルドやピザハット、チポトレといった有名ファストフード店の多くのメニューで、少量のフタル酸エステルが検出されたことを明らかにした。ワシントンポスト紙が報じた。
フタル酸エステルは、プラスチック製品を柔らかくするための可塑剤として使用される化学物質で、内分泌かく乱作用や、妊娠および生殖機能への問題、子供の学習、集中力、行動障害など、発達障害の危険を高めるなどの問題が指摘されているという。
研究に参加したラリア・エドワーズ氏やアミ・ゾタ教授らは、テキサス州サンアントニオにあるマクドナルド、バーガーキング、ピザハット、ドミノ、タコベル、チポトレから64アイテムを購入し、調査を実施した。
チェーンの選定には、マーケットシェアに関するデータを利用。各店で最も売れ行きの高いメニューをサンプルとした。
これらサンプルのすべてに、一種類以上のフタル酸エステル、またはその他の可塑剤が含まれていたという。サンプルの80%からは、喘息の危険性とのつながりが疑われているフタル酸エステルの一種であるDnBPが、70%からは、生殖機能の問題の増加との関係が指摘されているDEHPが見つかった。さらに86%のサンプルに、フタル酸の代替として使用されている可塑剤が含まれていた。研究者らは、代替物質について、人体や環境への影響に関する研究が不足していると話している。
混入経路は?
フタル酸エステルの一部は、玩具などへの使用が禁止されているが、ゴム手袋や工業用チューブ、ベルトコンベヤーに頻繁に使用されており、これらから食品へと入り込む可能性があるという。また、研究チームが、レストランから収集した食品取扱用の手袋を検査したところ、これらの物質の陽性判定が出たという。
経路の特定は研究の一環ではないが、エドワーズ氏らは、フタル酸エステルとその代替品が食品のサプライチェーン全体に存在しているためだと考えているという。
規制は?
米食品医薬品局(FDA)では、フタル酸エステル類のしきい値を定めていない。今回の研究で判明した含有レベルは、米環境保護庁による健康保護の値を下回っており、研究者らは、政府機関が警告を発するレベルではないとみている。
FDAの報道官は、ワシントンポスト紙の取材に「すでに高度の安全基準を設けている」としつつ、「新たな科学情報が入手可能であれば、安全評価を見直す」と柔軟な姿勢を強調。「許可された使用で害がないと合理的に確証できないと判断した場合、食品添加物の承認を取り消す可能性もある」と話した。FDAでは、食品の包装や加工設備を「間接添加物」として規制対象にしているという。
研究結果は、人種差別や格差の問題と関わる可能性もある。
ゾタ教授が以前行った研究では、ファストフードを多く消費する人ほどフタル酸エステルの蓄積レベルが高いことが判明しているという。教授はポスト紙に、貧困地域は、ファストフード店が多く軒を連ねる一方で、フルーツや野菜といった健康食品へのアクセスが限られていると指摘。「食品砂漠に暮らす人々が、これらの有害物質にさらされる高い危険があるか否かを把握するため、追加の研究を要する」と話した。