ロシア連邦議会で現在、対ロ制裁を実施している国のデジタルコンテンツについて、著作権者の許可なく上映や利用を可能とする法案を検討しているという。ロシア国営メディアRTが伝えた。
アントン・ゴレルキン国家院議員は同局の取材に「強制ライセンス」の法律が成立すれば、映画館でハリウッドの新作の上映が可能になると話したという。
ロシアのウクライナ侵攻開始直後、ハリウッドの大手映画会社は相次いで取引の停止を決定。ピクサーのアニメ『私ときどきレッサーパンダ』(Turning Red)や、ソニーの『モービウス』(Morbius)、ワーナーの『ザ・バットマン』(THE BATMAN)といった大作が公開直前で取りやめとなった。
ロシアでは、ボックスオフィスの80%をハリウッド映画が占めるともいわれる。RTによると、公開中止による損失を回避するため、一部の映画館は「事前上映サービス」と呼ばれるものなど、裏技を考案、上映を続けているという。
事前上映サービスは、国産映画などの上映前に、ハリウッド映画を無料試写と称して上映するもので、例えば、現在世界で大ヒット上映中の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』に関して、ある映画館では、3時間12分の大作を「無料プレセッションサービス」として流し、その後わずか6分の短編映画を上映するという、強引な二本立て企画を実施している。
そのほか、それと認識できる程度に変えたタイトルをつけて、手書きのチケットを販売する映画館や、企業や個人が劇場を借りてプライベートとして上映するケースなども報じられている。このような方法では、チケット販売数の自動報告を回避できるという。
先述のゴレルキン議員は「西洋映画の強制ライセンスのメカニズムの論争に終止符を打つ時だ」と主張。「映画館が新しい外国映画を合法的に上映できるようにするための法案が議論されている」と話し、「半合法的な事前上映」が要らなくなると語った。
RTはこの前日、お隣のベラルーシでも、「非友好国のデジタルコンテンツを使用することを一時的に合法化」する法案が、ルカシェンコ大統領の署名によって成立したと伝えている。
どうやって素材を調達しているのか気になるところだが、ロシアの独立ニュースサイトMeduzaは先月、アバターに関して、サンクトペテルブルクやエカテリンブルク、クラスノヤルスクにある映画館では、カザフスタンなどの「友好国」から上映用デジタル素材(Digital Cinema Package)のコピーを調達し、大画面で高品質なロシア語吹き替版を上映していると伝えた。ファイルシェアやデジタルライツの専門サイト、トレントフリークは、非公開のトレントサイトを通じて素材がシェアされている例があるとも指摘している。
こうした違法行為がどれだけ広く普及しているか、明らかでないものの、かくしてロシア国民も新作ハリウッド映画を満喫しているようだ。