映画「Rust」の撮影中に起きた誤射事件に関し、スクリプターのメイミー・ミッチェル氏は17日、会見を開き、俳優兼プロデューサーのアレック・ボールドウィンとその他のプロデューサー陣に対して、損害賠償を求める訴訟を、ロサンゼルス郡上級裁判所に提起したことを明らかにした。
事件があったのは、先月21日。ニューメキシコ州サンタフェにある撮影現場で、ボールドウィンがリハーサル中に放った銃に、誤って実弾が込められていた。銃弾を受けた撮影監督のハリーナ・ハッチンスさんが死亡したほか、ジョエル・ソーザ監督が肩を負傷した。
銃を用意したのは、武器係の責任者ハンナ・グティエレス・リード氏(24)で、銃を手渡したのはアシスタント・ディレクターのデイブ・ホールズ氏だった。
会見に同席した弁護士、グロリア・オールレッド氏は、声明を読み上げ、「銃器の安全を担保するための業界の安全手順が無視され、業界の規範に反した行為があった」と非難した。
スタッフのせいにはできない
声明では、業界の労使安全委員会は、すべての銃器は、銃弾が装填されているものとして扱わなければならないとしていると指摘。ボールドウィンは、問題となった銃が装填さていないことを示されるか、自分で確認をするまで、装填されているものと想定すべきであり、「コールドガン」というアシスタントディレクターの言葉を信用してはならなかったと述べた。
また、銃は、武器責任者以外から受け取ってはならないとされているほか、俳優に渡る際に、武器係から、薬室が空であることが示されなければならないと説明。業界のベテランであるボールドウィンは、これら規範を認識していながら、無視したと語った。
武器係による管理の問題にも言及。武器係は、すべての銃と弾薬に鍵をかけて保管するか、使用されるまで近くにいなくてはならないとした上で、事件当日の昼休みの間、台車の上に乗せて、放置していたと述べた。
オールレッド氏は、事件は「単純な過失」ではないと主張。「ボールドウィン氏は、自分で確認をせずに、また武器係に自分の前で確認をさせずに銃を放ち、ロシアンルーレットを実行することを選んだ」と述べ、「無謀」と非難した。
ミッチェル氏は、事件発生時、銃が向けられた場所におり、「ショックを受け、トラウマを負い、身体的かつ感情的危害に苦しんでいる」と説明。「補償的、懲罰的損害賠償を求める」と述べた。
なお、ボールドウィンは先週、照明係のセルゲイ・スヴェトノイ氏からも訴訟を起こされている。
武器係は落ち度を否定。悪意ある第三者の可能性を示唆
武器係のハンナ・グティエレス・リード氏の代理人、ジェイソン・ボウルズ氏は今月3日、情報番組「グッドモーニングアメリカ」に出演し、リード氏は、銃弾の管理と安全確認を十分に行ったとした上で、誰かが意図的に撮影を妨害しようとした可能性があると語った。
ボウルズ氏によると、リード氏は撮影前「ダミー・ラウンド」とラベルのついた箱から、6発の弾を取り出し、シリンダーに装入。アシスタント・ディレクターのホールズ氏に手渡す際、シリンダーを回転させ、全ての銃弾を見せた。ホールズ氏はそれを確認した上で、撮影現場の教会に持ち込み、ボールドウィン氏に手渡した。
ボウルズ氏は、リード氏以外の誰かが、実弾を箱に入れたと説明。「実弾と空砲の弾は非常に似ており、それをするのは、混乱を生じるよう悪意を持っている時だけだ」と述べ、意図的に混入されたとの考えを示した。