19日、上院軍事委員会の新たな脅威と能力に関する小委員会はUAPに関する公聴会を開き、先週年次報告書を提出したAAROのジョン・コスロスキ長官から報告を受けた。
AAROは、海軍のタスクフォースの後継としてUFO調査をしていた「Airborne Object Identification and Management Synchronization Group(AOIMSG)」に変わり2022年7月に設置された部門。コスロスキ博士は、ショーン・カークパトリック初代長官に代わり、8月に長官職に就任した。
コスロスキ長官は、事前に用意したオープニングステートメントで、AAROには1,600件を超えるUAP報告があるとした上で、異常な可能性のある現象はごくわずかで、大半は鳥、気球、無人システムなどありふれたものだと説明。「地球外生命体や活動、または技術について検証可能な証拠は発見していない」と語った。解決済みの報告事例のうち、75%がバルーンで、16%がドローンだったという。
先週下院監視委員会で開催された公聴会で議論に上った「Go Fast」をはじめとする一部の事例にも言及した。
Go Fastは、海面を掠め飛ぶように飛行する物体で、2016年にフロリダ沖で原子力空母セオドア・ルーズベルトの海軍戦闘機から撮影された。
コスロスキ博士は、Go Fastは分析の結果、「異常な速度や飛行特性」を示していないことが「高度の信頼性」を持って評価されたと説明。ただし、海軍機からの正確な位置データの不足により、正確な位置を「高度の信頼性」で分析することは不可能であると加えた。
2013年にプエルトリコのラファエル エルナンデス空港上空で国境警備局の航空機によって撮影された物体にも言及。
赤外線ビデオには物体が高速移動して、2 つに分裂したり、海中に進入して再び出てきたりする様子が映っているようだとしつつ、これについても異常な速度や飛行特性を示さなかったと高度の信頼性で評価しているとした。
物体は分裂したのではなく2つの物体が接近して飛行しており、高速に感じるのは「運動視差」によるものだと説明した。
また、2018年のエトナ山噴火時に地中海上空で無人機によって撮影された物体について、火山から約170キロメートル程離れた地点で風に漂っていた気球であると中程度の確信を持って評価していると語った。
国防総省は先週、AAROの年次報告書を議会に提出し、その中で2023年5 月から一年間で新たに485件の報告が発生したと明らかにした。さらに、収集されたUAPの報告が「外国の敵対勢力によるものであることを示す証拠や確証はない」とも結論付けた。
高まる疑念
この一方、下院監視委員会の小委員会が先週開催した公聴会では、証人として出席した元国防総省の職員やジャーナリストらから、情報の隠蔽や内部告発者の抑圧をめぐって非難の声が相次いだ。
ジャーナリストのマイケル・サレンバーガー氏は、国防総省には議会の承認を受けていない秘密の情報収集プログラムがあると指摘。政府は情報開示の要求に近年ますます拒絶的な姿勢を強めていると批判した。
海軍気象海洋学司令部の元司令官、ティム・ギャローデット氏も、一部のUAP情報が特別プログラムによって機密扱いされている可能性があると主張。自身を含む上級職員や議員から隠蔽されているだけでなく、UAPに関連する内部告発者の信用失墜を狙った個人攻撃や偽情報キャンペーンも行われていると批判した。
国防総省の元職員で、現在メディアパーソナリティを務めるルイス・エリゾンド氏は「UAPはリアル」であり、「われわれの政府や他国の政府によって作られたものではない先進技術が、機密性の高い世界中の軍事設備を監視している」と主張した。「米国はUAP技術を所有しており、敵国も同様である。われわれは、数十年間におよぶ秘密の軍事競争の真っ只中にある」と警告した。